李白
蘭陵美酒鬱金香
玉椀盛來琥珀光
但使主人能酔客
不知何處是他郷
蘭陵(らんりょう)の美酒(びしゅ)鬱金香(うっこんこう)
玉椀(ぎょくわん)に盛(も)り来(きた)る 琥珀(こはく)の光(ひかり)
但(た)だ主人(しゅじん)をして能(よ)く客(かく)を酔(よ)わしむれば
知(し)らず何(いず)れの処(ところ)か是(こ)れ他郷(たきょう)
【訳】
蘭陵の美酒は、鬱金の香りを放ち、美しい杯になみなみと注げば、琥珀色に輝く。この宿の主人が、旅人である私を存分に酔わせてくれさえすれば、異郷の地であるのを忘れて分からなくなってしまうものだ。
【解説】
李白が34~35歳または40歳の頃、他郷に流浪している途中で立ち寄った蘭陵(山東省)で詠んだ詩です。題の「客中」は、旅の途中、旅のさなかの意。当時の蘭陵は酒の産地でもありました。李白は酒をこよなく愛し、友人の杜甫が過去や同時代の酒豪たちを詠んだ『飲中八仙歌』の一節に「李白一斗詩百篇」(李白は一斗の酒を飲めば詩を百篇も作る)の句があるほどです。この詩は、旅先にあって旅愁を感じながらも、美酒に酔いしれて忘我の境に浸っている様子を詠じています。
七言絶句。「香・光・郷」で韻を踏んでいます。〈美酒〉は、うまい酒。〈鬱金香〉は鬱金の香り。鬱金は西域産の香草の名で香料に用います。ここでは鬱金香のような芳香を放つ酒。酒の銘柄と解するものもあります。〈玉杯〉は玉で作った杯、美しい杯。〈盛来〉は、なみなみと注ぐ。〈琥珀〉は宝石の名。植物性の樹脂が地層にうもれて化石化したもの。赤・黄・褐色などの色があり、ここでは酒の黄色の形容。〈但使〉は、ただ~でありさえすれば。〈主人〉は宿の主人、宴席の主人。〈客〉は旅人。ここでは李白自身。〈他郷〉は異国、異郷。
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