枕詞は和歌で使われる修辞技法の一つで、『万葉集』に多く見られます。ふつうは5音からなり、それぞれが決まった語について、語調や意味を整えたりします。ただし、枕詞自体は、語源や意味がわからないものが殆どです。(下表はおもな枕詞の例)
茜さす(あかねさす) | 日・昼・紫 |
秋草の(あきくさの) | 結ぶ |
秋津島/蜻蛉島(あきづしま) | 大和 |
秋萩の(あきはぎの) | 移る・しなふ・花野 |
朝髪の(あさがみの) | 乱る |
朝霜の(あさしもの) | 消(け)・消え |
浅芽生の(あさぢふの) | 小野(をの) |
朝露の(あさつゆの) | 消(け)・命・置く |
葦垣の(あしかきの) | 古る・乱る・間ぢか・外(ほか) |
葦が散る(あしがちる) | 難波 |
足引の(あしひきの) | 山・峰 |
あぢさはふ | 目・妹(いも)が目 |
あぢむらの | 騒く |
梓弓(あづさゆみ) | 引く・張る |
天雲の(あまくもの) | たゆたふ・別る |
雨隠り(あまごもり) | 三笠 |
雨衣(あまごろも) | みの |
天離る(あまざかる) | 日・鄙(ひな) |
天伝ふ(あまつたふ) | 日 |
天照るや(あまてるや) | 日 |
天飛ぶや(あまとぶや) | 雁(かり)・軽 |
海人小舟(あまをぶね) | 泊瀬(はつせ)・初 |
新玉の/荒玉の(あらたまの) | 年・春 |
霰降り(あられふり) | 鹿島・きしみ・遠(とほ) |
荒磯波(ありそなみ) | 有り・在り |
青丹よし(あをによし) | 奈良 |
青柳の(あをやぎの) | 糸・葛(かづら) |
鯨魚取り(いさなとり) | 海・浜・灘 |
石の上(いそのかみ) | 古る・降る |
石橋の(いはばしの) | 間(ま)・近し・遠し |
石走る(いはばしる) | 滝・垂水 |
泡沫の(うたかたの) | 消ゆ・憂き |
打ち靡く(うちなびく) | 春・草 |
うちひさす | 宮・都・三宅 |
打ち寄する(うちよする) | 駿河 |
空蝉の(うつせみの) | 命・世・人・身・むなし・わびし |
鶉(うづら)鳴く | 古る |
味酒(うまさけ) | 三輪・三室・神奈備 |
埋もれ木の(うもれきの) | 下・知れぬ |
沖つ鳥(おきつとり) | 鴨(かも) |
沖つ波(おきつなみ) | 高し・立つ |
沖つ藻の(おきつもの) | 名張 |
奥山の(おくやまの) | 真木(まき)・立木(たつき) |
押し照る(おしてる) | 難波 |
大君の(おほきみの) | 三笠 |
大伴の(おほともの) | みつ |
杜若(かきつばた) | にほふ・につらふ |
陽炎の(かぎろひの) | 春・燃ゆ |
片糸の(かたいとの) | よる・くる・あふ |
神垣の(かみがきの) | 三室 |
神風の(かむかぜの) | 伊勢 |
唐衣/韓衣(からごろも) | 着る・裾 |
草枕(くさまくら) | 旅 |
葛の葉の(くずのはの) | うら・恨み |
呉竹の(くれたけの) | 節・夜・むなし |
高麗錦(こまにしき) | 紐 |
隠りくの(こもりくの) | 泊瀬(はつせ) |
細波の(さざなみの) | 近江・志賀 |
刺す竹の(さすたけの) | 君・皇子(みこ)・舎人 |
さねかづら | 後もあはむ・ありさけて・さ寝ずば |
さねさし | 相模 |
小牡鹿の(さをしかの) | 入野(いりの) |
敷島の(しきしまの) | 大和 |
敷妙の(しきたへの) | 枕・衣・床・袖・袂・黒髪 |
東雲の(しののめの) | 明く |
白雲の(しらくもの) | 立つ・絶ゆ |
白露の(しらつゆの) | たま・おく |
白波の(しらなみの) | よる・いちしろし・かへる |
不知火(しらぬひ) | 筑紫 |
白妙の(しろたへの) | 衣・袖・紐 |
菅の根の(すがのねの) | 長き・乱る・絶ゆ |
住江の(すみのえの) | 松・待つ・きし |
空見つ(そらみつ) | 大和 |
高砂の(たかさごの) | 待つ・尾の上(へ) |
高照らす(たかてらす) | 日 |
栲領布の(たくひれの) | 白・鷺(さぎ)・かけ |
玉葛(たまかづら) | はふ・繰る・長し |
玉極る(たまきはる) | 命・世 |
玉櫛笥(たまくしげ) | ふた・身・あく・ひらく・みもろ |
玉の緒の(たまのをの) | 絶ゆ・長し |
玉桙の(たまぼこの) | 道・里 |
玉藻刈る(たまもかる) | 沖・敏馬(みぬめ)・乙女 |
玉藻なす(たまもなす) | 浮かぶ・寄る、なびく |
垂乳根の(たらちねの) | 母・親 |
ちちの実の | 父 |
千早振る(ちはやぶる) | 神・宇治 |
つぎねふ | 山城 |
解き衣の(ときぎぬの) | 乱る |
飛ぶ鳥の(とぶとりの) | 飛鳥 |
灯火の(ともしびの) | 明石 |
鶏が鳴く(とりがなく) | 東(あづま) |
夏草の(なつくさの) | 野鳥・しげし |
射干玉の(ぬばたまの) | 髪・黒・闇・夜 |
春霞(はるがすみ) | 立つ・春日(かすが) |
鳰鳥の(にほどりの) | 葛飾(かづしか)・なづさふ・並ぶ |
旗薄(はたすすき) | 穂 |
ははそ葉の | 母 |
久方の(ひさかたの) | 空・天・光 |
冬籠り(ふゆごもり) | 春・張る |
時鳥/霍公鳥(ほととぎす) | 飛ぶ |
真澄鏡(まそかがみ) | 見る・みぬめ・懸く・磨ぐ・ふた・面影 |
御食向かふ(みけむかふ) | 淡路 |
瑞垣の(みづがきの) | 神・久し |
水茎の(みづくきの) | 水城・岡 |
蜷の腸(みなのわた) | か黒し |
群肝の(むらぎもの) | 心 |
群鳥の(むらどりの) | 立つ・朝立つ |
武士の(もののふの) | 八十(やそ)・五十(い)、矢 |
もみぢ葉の(もみぢばの) | 赤・朱・移る・過ぐ |
百磯城の/百敷の(ももしきの) | 大宮 |
百伝ふ(ももづたふ) | 八十(やそ)・磐余(いはれ)・渡る・津・鐸(ぬて) |
八雲立つ(やくもたつ) | 出雲 |
やすみしし | わが大君 |
山菅の(やますげの) | 実・乱る・背向(そがひ) |
山吹の(やまぶきの) | 止む |
行く鳥の(ゆくとりの) | 争ふ・群がる・群る |
行く船の(ゆくふねの) | 過ぐ |
夕月夜(ゆふづくよ) | 暁闇(あかときやみ)・小倉山・入る・入野 |
木綿花の(ゆふはなの) | 栄ゆ(さかゆ) |
若草の(わかくさの) | 夫(つま)・妻・新(にひ) |
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