【巻第一】
雄略天皇の時代から寧楽(なら)の宮の時代までの歌。雑歌のみで、万葉集形成の原核となったものが中心。天皇の御代の順に従って配列されている。
【巻第二】
仁徳天皇の時代から元正天皇の時代までの相聞・挽歌。巻第一と揃いの巻と考えられ、巻第一と同様に部立てごとに天皇の御代に従って歌が配列されている。このため勅撰ではないかとする説もある。
【巻第三】
巻第四とともに、巻一・ニを継ぐ意図で構成されている。拾遺の歌と天平の歌を収め、雑歌・譬喩歌(ひゆか)・挽歌の三つの部立となっている。
【巻第四】
巻第三とともに、巻一・ニを継ぐ意図で構成されている。天平以前の古い歌をまず掲げ、次いで天平の歌を配列している。私的な歌である相聞歌のみで、天平に入ってからは大伴氏関係の歌が中心となっている。
【巻第五】
巻第六とともに主に天平の歌を収める雑歌集。とくに大伴旅人と山上憶良の、九州の大宰府在任時代の作を中心として集めた特異な巻になっている。
【巻第六】
巻第五とともに主に天平の歌を収める雑歌集。巻第五が大伴旅人と山上憶良の大宰府在任時代の作を中心として集めた巻であるのに対し、巻第六は奈良宮廷をおもな舞台として詠まれた歌が中心となっている。
【巻第七】
雑歌・譬喩歌(ひゆか)・挽歌の三つの部立となっている。おおむね持統朝から聖武朝ごろの歌ながら、柿本人麻呂歌集や古歌集から収録した歌を含んでいるため、作者名や作歌事情等が不明なものが多くなっている。
【巻第八】
四季に分類された雑歌と相聞歌。舒明朝~天平十六年までの歌で、作者群は巻第四とほぼ同じ。
【巻第九】
おもに『柿本人麻呂歌集』、『高橋虫麻呂歌集』や『古歌集』などから収録され、雄略天皇の時代から天平年間までのもの。雑歌・相聞歌・挽歌の三部立て。
【巻第十】
巻第八と同様の構成、すなわち、四季に分類した歌をそれぞれ雑歌と相聞に分けている。作者や作歌年代は不明で、もとは民謡だったと思われる歌や柿本人麻呂歌集から採られた歌もある。
【巻第十一】
『万葉集』目録に「古今相聞往来歌類の上」とあり、巻第十二と姉妹編をなしている。柿本人麻呂歌集や古歌集から採られた歌が多く、もとは民謡だったと思われる歌が大部分で、作者・作歌年代も不明。
【巻第十ニ】
「古今相聞往来歌類の下」の巻で、巻第十二と姉妹編をなしている。柿本人麻呂歌集から採られた歌も多く、民謡的色彩が強く、作者・作歌年代も不明。
【巻第十三】
作者および作歌年代の不明な長歌と反歌を集めたもので、部立は雑歌・相聞・問答歌・譬喩歌(ひゆか)・挽歌の五つからなっている。
【巻第十四】
主として東国諸国で詠まれた作者不明の歌を集めている。国名の明らかなものと不明なものに大別し、更にそれぞれを部立ごとに分類しているが、整然とは統一されていない。
【巻第十五】
物語性を帯びた二つの歌群からなる。前半は遣新羅使らの歌、後半は中臣宅守と狭野弟上娘子との相聞贈答の歌が収められている。天平八年から十二年ごろまでの作歌。
【巻第十六】
巻第十五までの分類に収めきれなかった歌を集めた付録的な巻。伝説的な歌やこっけいな歌などを集めている。
【巻第十七~二十】
巻第十七~二十は、大伴家持の歌日誌というべきもので、家持の歌を中心に、その他の関係ある歌もあわせて収めている。巻第十七には、天平2年から20年までの歌を、巻第十八には天平20年から天平勝宝2年まで、巻第十九には天平勝宝2年から5年まで、巻第二十には同5年から天平宝字3年までの歌を収めている。
とくに巻第二十には防人歌を多く載せており、これは、家持の手元に集められてきたものを家持が記録し、取捨選択したものと考えられている。