「佐幕派」の歴史ファンの人たちにすれば、倒幕派つまり薩長の人たちは何となく好きになれないところがあるかもしれません。江戸幕府をいじめ倒した敵役というイメージがあるでしょうからね。西郷隆盛など、とても素晴らしい人物だったとは思うんですけど、やっぱりちょっと抵抗があるかもです。
でも、現在の日本の繁栄の礎を築いてくれたのは、まぎれもなく維新政府の人たちだし、国の存亡さえ危うかったあの時代に、必死のパッチになって国力を高め、並居る先進諸国に対峙した彼らです。そして、維新政府のなした数ある業績のなかで、とりわけ素晴らしいと思うのが「帝国大学」の設立です。
なぜなら、その理由が、薩長の人脈ばかりで官吏ができ上がることを防ぐためというのですから。彼らの思惑は、幕末生まれの豪傑ばかりではこれからの政治はやっていけない、優秀な官僚が必要である。しかも、これからの官僚はニュートラルでなければならない、というものでした。
帝国大学の設立によって、藩閥と一切関係のない、情実のない、試験による人事を日本で初めて行おうとしたわけです。薩長ファーストを押し通そうとすれば、帝国大学などつくらず、ずっと薩摩と長州から人材を採っていけばよかったのに、そうしなかった。日本の将来を鑑み、自らの首を絞めるようなことを敢えて行った。偉いなーと思います。
なお、1886年(明治19年)に公布された「帝国大学令」によって順次設置された帝国大学は、内地に7校(東京・京都・東北・九州・北海道・大阪・名古屋)、外地に2校(京城・台北)です。ここでさらに驚くべきは外地に2校も設置したことです。しかも大阪・名古屋より早い時期にです。民族自決を抑える狙いもあったようですが、それでも植民地に大学をつくるなんて、ふつう有り得ますか? こういうところが、もっぱら搾取の対象としか見なかった欧米列強による植民地政策と明らかに異なっている点です。
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