ドイツの哲学者ヘーゲルは、人間の本質は精神であり、また自然界や人間の歴史を、決して絶えることのない運動としてとらえました。そして、その仕組みを「弁証法」によって説明し、弁証法の論理を確立した人です。「弁証法」とは、討論する、会話する、という意味の「ディアレクティケー」というギリシア語に由来し、存在するものが矛盾と対立のなかで変化・発展していく法則のことです。現在、哲学用語として用いる弁証法は、ヘーゲルによる弁証法を指すのが一般的です。
古代ギリシアの哲学者ソクラテスは、問答法を用いて哲学を探求していました。「〇〇とは何か」という問いを投げかけ、相手の答えの中から自己矛盾を見つけてさらに問答を繰り返す、そうして、それ以上さかのぼれないところまで真実を掘り下げていこうとしたのがソクラテスの問答法で、これも弁証法の一種だとされています。
ヘーゲルは、真理とは、弁証法という手法によって多くの人々が長い時間をかけて少しずつ形作っていくものだと主張しました。そもそも、それだけで真理を完全に説明できるような絶対的原理などありえない。一つの命題や主張があったとしても、それは一面的であり、必ずそれと対立する命題や主張によって否定される。この反対の命題や主張にもまた一面性があるから、それぞれのよいところを組み合わせた第三の命題や主張が出てくる。このような対立を繰り返すことによって、より新しい真理に近づいていく・・・。
この過程は、正(定立)⇒反(反定立)⇒合(総合)というふうに表現されます。また最後の段階で、それら対立するものをより高次なものへと否定的に統合することを「止揚(しよう)=アウフヘーベン)といっています。
ヘーゲルは、弁証法こそが人類を真理へ導く最良の方法だと考え、さらに世界の歴史にもこの弁証法を当てはめました。歴史も真理の探究と同じように、弁証法の手法によって進展していき、やがて究極の理想世界にたどり着けるだろうと考えたのです。時代はフランス革命によって王政国家が倒され、民主国家への転換期にありました。まさに歴史がより良い方向に大きく進みつつある最中にあり、そうした背景からも、ヘーゲルの考え方は広く受け入れられたのです。
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