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哲学に親しむがんばれ高校生!

ルソー

スイスのジュネーブに生まれ、フランスで活躍した哲学者(1712年~1778年)。16歳でジュネーブを離れ、さまざまな職を経たのち30歳でパリに移住。パリでは多くの啓蒙思想家が集まるカフェに出入りし、モンテスキューやヴォルテール、ディドロなどと知り合った。
自然科学、教育など多くの分野で論文を地術、フランス革命の精神的な支柱となり、その後の民主政治に大きな影響を与えた。
また、作曲家でもあり、童謡の『むすんでひらいて』は、彼のオペラ作品『村の占い師』が元になっているといわれる。

 18世紀、絶対王政下にあったフランスで活躍したルソーは、哲学者であり思想家、小説家であり作曲家、まさに分野を飛び越えてさまざまな事績を残した人です。私生活も波乱万丈に富み、ときに問題行動もあったといわれ、とても興味深い人物です。そんなルソーが、ホッブズの「民衆は国家に服すべし」とする社会契約説に強く反論します。

 ホッブズが主張したのは、人間が自然状態に戻ると「万人の万人による闘争」、すなわち利己的で極悪な人間は互いに殺し合うようになるので、そんな悲惨な状態にならないように、個々の権利を国家権力に委譲し、その見返りに安全を得るという社会的な契約を結んでいるのだというものでした。
 
 これに対しルソーは、本来、人間は平和的な生き物であり、自然状態で生き続けるためには互いに協力して力を結集する必要がある、その上で各人が自由で平等であるような社会を構築しなければならない、その原理こそが社会契約だと考えます。社会契約を結ぶことによって、各人の自然的自由と欲しいままに何かを獲得できる権利を制限しつつも、社会的自由と所有権を保障し平和をもたらすことができる。各人の体力や天分においては不平等でありうるが、この契約によって道徳的な平等を獲得できるのだ、と。
 
 そして、社会契約を結んだ人々は、人々の「一般意志」のもとに国家を作り上げ、国家は法に基づいて活動する。法が「一般意志」の表現であるならば、人々は自分で自分を規制しているのだから、自由が侵されたことにはならない、と。「一般意志」というのは市民社会の正当性の規準となるもので、ルソーは、公共の利益と個人の利益を同時に尊重する市民相互の結合によって生じるものとしています。
 
 ルソーは、「一般意志」とは別に「特殊意志」「全体意志」という言葉も使っています。それぞれを区別して整理すると、「特殊意志」は個人的欲望を実現しようとする意志、「全体意志」は個人的欲望が集まった意志、そして「一般意志」は公共の利益の実現をはかる普遍的な意志、ということになります。「全体意志」が「一般意志」と必ずしも同一でないことに注意が必要です。
 
 さらにルソーは、自由と生命を守るための最高権力者である国家を作る主体として人民を位置づけ、今日の国民主権の原型を作りました。そして「国家は真の権力者である人民から権力を委任された、取り換え可能な一つの機関にすぎない」と再定義しました。また彼は、国家が一般意志に基づいて法を制定し政治を行い、一方、各人には法に服従することを義務づけたことで、近代的な「法の支配」に基づく民主主義的な支配・被支配のあり方を明らかにしたのです。
 
 しかし、当時は王や貴族たちの特権階級が国家を支配していた時代でしたから、ルソーの「革命もありうる」とする考えは危険思想とみなされました。彼の著作は次々に発禁処分を受け、彼自身も逮捕される恐れがあったため、ヨーロッパ各地で亡命生活を送らなければなりませんでした。1770年にパリに戻ったものの、彼の生存中に名誉を顕彰されることはありませんでした。しかし、フランス革命が起き、ルソーの思想の影響を受けた「フランス人権宣言」が書かれると、彼の名声は一挙に高まりました。

ルソーの著作

  • 『人間不平等起源論』
    1755年刊。文明社会における私有財産制の発生が、暴力と不平等をもたらしたと論じた社会批判の書。『社会契約論』とともに重要な著書で、フランス革命への影響は大きかった。
  • 『政治経済論』
    1755年刊。人民の幸福を目的とする政府の守るべき原則を論じている。国家が守るべき第一原理は、「つねに全体および各部分の保存と幸福を目ざし、法律の源泉となる」一般意志に従うことだと述べている。
  • 『社会契約論』
    1762年刊。 『人間不平等起源論』と『政治経済論』を発展させたもの。いかにして一般意志が貫徹する政治体を形成し、人間が自然状態で持っていたのと同じ自由と平等を確保するかという課題を追究。
  • 『エミール』
    1762年刊。人間の性質と、子供の自然な本性にしたがって行われる教育のあり方について論じた。パリとジュネーブで出版を禁止され公開の場で焼かれたが、フランス革命時に、新しい国の教育制度になるヒントとして役立てられた。
  • 『告白』
    第1部(6巻)と第2部(6巻)からなる自伝で、ルソー死後の1782年と1788年に出版された。第1部は幸福な前半生として少年・青年時代を率直かつ詳細にユーモア混じりに書かれ、第2部は不幸な後半生として晩年の被害妄想の影響下に書かれた暗い内容になっている。

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ルソーの言葉から

  • 人間は生まれながらにして自由であるのに、至る所で鉄鎖に繋がれている。
  • 自由を放棄することは、人間としての性質を放棄することである。
  • ある者は明日に、他の者は来月に、さらに他の者は十年先に希望をかけている。誰一人として、今日に生きようとする者がいない。
  • 人間とは本質的に善いものであり、堕落しているのは社会のほうである。
  • 私達はいわば二回この世に生まれる。一回目は存在するために、二回目は生きるために。
  • 勇気がなければ幸福は得られない。戦いなしには美徳はありえない。
  • 自然は決して我々を欺かない。我々自身を欺くのは常に我々である。
  • 肉体があまり安楽すると、精神が腐敗してくる。
  • ものを知らない人はよくしゃべり、よく知っている人はあまりしゃべらない。
  • 理性は独りで歩いてくる、偏見は群れで走ってくる。
  • 学問とはわずかな時の間に、数百千年の人類の経験を受け取ることである。
  • 私たちは無知によって道に迷うことはない。自分が知っていると信じることによって迷うのだ。
  • 十歳では菓子に、二十歳では恋人に、三十歳では快楽に、四十歳では野心に、五十歳では貪欲に動かされる。人間はいつになったら、英知のみを追うようになるのだろうか。
  • 洗練された眼差しは、細やかで鋭敏な感性に他ならない。
  • 人間が生きている間、決して消え失せることのない唯一の情欲は自愛である。
  • 謙遜は人間には当たり前だが、子どもには当たり前でない。謙遜は悪を知ってからでなければ身につかない。
  • 自然を見よ。そして自然が教える道をたどっていけ。自然は絶えず子供を鍛える。
  • いかなる物でも、自然という造物主の手から出るときは善であり、人間の手に渡って悪となる。
  • 子供を不幸にする最も手っ取り早い方法は何か知っているだろうか。それは、いつでも何でも手に入れられるようにしてやることだ。
  • 拒絶に慣れていない子供は、欲しいものが手に入らないということより拒絶されたことを一層辛く考えることになる。
  • 世界で一番有能な教師よりも、分別のある平凡な父親によってこそ、子供は立派に教育される。
  • 子供達が父親に結び付けられているのは、自分達を保存するのに父親を必要とする期間だけである。
  • 子どもに純真な心を持ち続けさせるよい方法は一つしかないと思われる。それは、子どものまわりにいるすべての人が純真なものを尊重し、愛することだ。
  • 最も教育された者とは、人生のよいことにも悪いことにも最もよく耐えられる者である。
  • ある真実を教えることよりも、いつも真実を見出すにはどうしなければならないかを教えることが問題なのだ。
  • 恋と同じで、憎悪も人を信じやすくさせる。
  • 優雅は美貌と違ってすり切れない。それには生命があり、たえず新しくなる。したがって三十年の結婚生活の後にも、貞淑な妻に優雅ささえあれば、彼女は結婚の最初の日のように夫に気に入られる。
  • 人生の最初の四分の一はその使い道もわからないうちに過ぎ去り、最後の四分の一はまたその楽しさを味わえなくなってから過ぎて行く。しかもその間の期間の四分の三は、睡眠、労働、苦痛、束縛、あらゆる種類の苦しみによって費やされる。人生は短い。
  • 最も長生きした人間とは、最も年を経た人間のことではない。最も人生を楽しんだ人間のことである。
  • 政治体というのは、人間の体と同じように、生まれたときから死に始める。つまりそれ自体が、破滅の原因をもっている。

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音楽家ルソー

ルソーは時計職人の息子として生まれたが、父イザークはダンスをこよなく愛し、母のジャンヌ・ベルナールは、よく歌を歌い、ときには弾き語りもしていたという。専門的な音楽家家庭ではなかったが、ルソーは幼いころから音楽に囲まれて育った。

楽譜を読むのがあまり得意でなかったルソーは、新記譜法の成功を夢見て30歳でパリに上り、オペラに開眼し『優雅な詩の女神たち』を作曲。『百科全書』に多数の音楽項目を寄稿し、幕間劇『村の占い師』がルイ15世の前で上演されて大成功を収める。
 
なお、日本で歌われている童謡の『むすんでひらいて』は、彼のオペラ作品『村の占い師』が元になっているといわれる
 
その後、最後の著作となった『音楽辞典』を刊行し、『ピグマリオン』を作曲、『ダフニスとクロエ』は未完のまま死去した。

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