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オーケストラによる音色の違い

 指揮者によってオーケストラの音が変わってくるように、数あるオーケストラにも独特の音色があってそれぞれに違うのでしょうか。プロの音楽家や評論家、あるいは通(つう)のファンの方だと、たとえばブラインド・テストによっても、その違いを聴き分けることができるのでしょうか。恥ずかしながら、私には全く違いが分かりません。

 そういえば昔、私にクラシック音楽を教えてくれた同僚に「ウィーン・フィルとベルリン・フィルの音はどう違うのか?」と尋ねたことがあります。彼の答えは「たとえるなら、ウィーン・フィルは演歌、ベルリン・フィルはポピュラー・ミュージック」というものでした。「へー」と返事はしたものの、実のところは分かったような分からないような・・・・・・。

 以前は、違いの分かる人には、たとえばチェコ・フィルの音はすぐに「あ、これはチェコ・フィルだ」と判別できたそうですし、フィラデルフィア・サウンドなどという呼び方もあったとか。旧ソ連のオーケストラや、アメリカのメジャー・オーケストラなどにも独特の響きがあったそうです。

 ところが今では、ベルリン・フィルにしろウィーン・フィルにしろ、だいぶん個性は薄くなったといわれます。その理由に挙げられているのは、一つには楽器の性能がよくなって均一化されてきたこと、もう一つは、優秀な演奏者がグローバルに活動し、いろいろな国や地域のオーケストラで演奏するようになったからだとされます。また、録音がデジタルになったことも影響しているのではないか、とも。

 とすると、全く聴き分けられない私も、殊更に恥じる必要はなさそうです。しかし、こういう現象は、クラシック音楽ファンにとって好ましいことなのか、どうなのか。やはり、それぞれに個性や特徴があったほうが楽しいという気がします。しかし、かのバーンスタインは、こう語っていたそうです。「ニューヨーク・フィルの音というのがあってはならない。そこにあるべきは、ハイドンの音、モーツァルトの音だけだ」って。なるほどです。

世界のオーケストラ:ランキング

1位:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
2位:バイエルン放送交響楽団
3位:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
4位:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
5位:シュターツカペレ・ドレスデン
6位:パリ管弦楽団
7位:シカゴ交響楽団
8位:ロンドン交響楽団

〜『レコード芸術』(2017)から
 

女流の魅力

 「女流演奏家」を愛してやまなかった、故・宇野功芳先生。その理由は「男性の場合は頭脳ばかり使って演奏するから、皆同じような演奏になり、つまらない」というものでした。決して女性が頭脳を使っていないはずはないんですが、それより何より、その人の「感性」が直截的に音色や響きに表れる。このあたりは、やっぱり女流ならではの魅力だと感じますね。

 なぜ「女流」がそうなのかと考えるとき、私には思い起こす事例が2つあります。たとえばビジネス現場で、実は私、元銀行員で企業融資を担当していまして、ある会社を初めて訪問し、その会社の「社風」を見分けようとするときに、まず女性社員の表情を見るようにしていました。彼女らが明るく溌溂にふるまっていれば、その会社も、明るく風通しのよい会社で、反対に暗くて元気がなければ、どこかに問題のある会社です。これはけっこう当を得た判別方法でして、女性ならではの発露があり、男性社員だけを見ていたのでは、なかなか分かりにくい部分なのです。のちに監査の立場になって各支店・部署を見回るときも、同様の見方をしていました。

 それからもう1つ、全然違う話ですが、だいぶん前に、日本の女子バレーチームの監督さんが、男子選手と女子選手の違いについて語っていたことがあります。男女どちらのチームも、毎日のように猛練習を重ね、終わるとコートの床に倒れ込んで動くこともできなくなるそうです。これは男子も女子も同じで、疲れ果てて完全にグロッキー状態。しかし、それでも女子選手たちは、「あ、窓を閉めなきゃ」とか言って、起き上がって体育館の窓を閉めに行くんだそうです。

 その姿を初めて目にした時の監督さんは、「何だ、まだ力が余っているじゃないか!」と、えらく立腹したそうです。しかし、やがて、決してそういうわけではないのだと悟ったといいます。男子選手では絶対にあり得ないことだけど、どれほどヘトヘトになっても、どれほど苛酷な状態にあっても、そんな行動をとるのが女性なんだって。

 いかがでしょう。いずれも音楽とは全く関係のない、少々飛躍した話で、これらのことが「女流演奏家の魅力」の話とどう関係するのかといわれたら、何とも言えません。しかし、何気ないのだけど、「ああ、こういうのが女性なんだ!」と、男性にはない、心や感性の自然な発露が感じられる場面であると思うのです。そして、そうした部分に触れ合うことが、男にとっては、時に驚きであり、時に刺激的であるわけです。なかなかうまく言えませんが、女流の演奏に耳を傾けたときも、しばしばそれと似た感覚が得られるような気がします。

 ですから、私が持っている独奏曲や協奏曲のディスクも、ピアノにしろヴァイオリンにしろ、圧倒的に女流のものが多いです。男性演奏家とは、とにかく何かが違う。まーもちろん、男ですので、単純に「女性が好き」というスケベ心もあるわけですが・・・。
 

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