オーディオ関係のコミュニティなどでしばしば議論されている、機器類の「エージング」について、諸兄は如何お考えでしょうか。そもそもエージングなど存在しないとして、その必要性を完全否定なさる向きもあります。その理由もいくつか掲げられていて、なるほどと感じる部分も大いにあります。しかしながら、私の体験では、やはりエージングの効果はあるし、必要だと思っています。
これまでで、とても顕著にそれを感じたのがアンプです。買って間もないころは、ボーカルの「シ」とか「チ」の声が突き刺さるような感じで耳障りでしようがなかったのが、何ヵ月か経つうちに徐々に消えていきましたからね。他の音も含めて随分まろやかになりました。これは耳の慣れとかそういうもんではなく、明らかに分かる変化でしたよ。こういうのは、まさにエージング効果の一つといっていいのではないでしょうか。
スピーカーも然りです。最初に音出ししたときは、分離が悪くモコモコした音に聴こえて、えらく期待はずれでがっかりしたのですが、これも時間の経過とともに鮮明かつ艶やかな音色に変わってきました。メーカーサイト(YAMAHA)にも「エージングは必要です。内部配線材の音が変化するため、普段ご試聴いただくときの音量で、最低でも3時間(推奨は100時間程度)は行ってください」とあります。
さらに私は、機器類のみならず、オーディオを聴く「部屋」にもエージング効果はあると思っています。以前、わが家を全面リフォームしまして、新しい部屋で初めて音楽を聴いたとき、スピーカーの音が室内を暴れまくる感じで、どうにも収まりが悪く落ち着かない印象でした。床や壁に防音工事を施し、音響板も貼りつけてもらったにもかかわらずです。しかしこれも、日数の経過とともに、どっしりと落ち着いた感じに変わってきたから驚きです。
この理由はですねー、例のごとく素人考えで恐縮ですが、壁や床、天井の素材を構成する成分、たとえば分子とか原子とかが、繰り返し音楽の振動を受けているうちに、だんだんこなれてくるからだと思うんですね。そうして部屋自体が音楽に慣れてきて、不自然で妙な共振や響きなどが徐々に収まってくる。室内の調度品などについても同様です。むろん私自身の耳の慣れもあるかもしれませんが、それでも部屋のエージング効果はきっとあると信じています。
●良い音=聴き疲れしない音