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巻第1(索引)万葉集(掲載歌の索引)古典に親しむ

『万葉集』巻第1-70

訓読

大和には鳴きてか来(く)らむ呼子鳥(よぶこどり)象(きさ)の中山(なかやま)呼びそ越(こ)ゆなる

意味

大和には今ごろ呼子鳥が鳴いて来ているのだろうか。象の中山を人を呼びながら鳴き渡っている声が聞こえる。

鑑賞

 高市黒人(たけちのくろひと)の「太上天皇、吉野の宮に幸す時に作る」歌。太上天皇は持統天皇で、行幸に従駕した作者の正式な宴遊歌として現存する唯一の歌です。高市黒人は柿本人麻呂とほぼ同時代の下級官人(生没年未詳)。大和国6県の一つである高市県の統率者の家筋で、その氏人の一人だと見られています。『万葉集』に収められている18首の歌はすべて大和以外の旅先のもので、とくに舟を素材とし、漠とした旅愁を漂わせる作品に特色があります。

 「鳴きてか来らむ」の「らむ」は、現在推量。「呼子鳥」は、子すなわち妻を呼ぶ鳥の意で、カッコウまたはホトトギス。この名は時代と共に変化しており、「喚子鳥」と書いた字面から「閑古鳥」といわれ、やがて郭公(カッコウ)になったとされ、カッコウを呼子鳥といった例が最も多いようですが、未だ定説がありません。「象の中山」の「象」は、吉野離宮の上の象山(きさやま)、「中山」は、そこにある山。「呼びぞ越ゆなる」の「なる」は連体形で「ぞ」の結び。ここの係り結びは、「ぞ」が入ることで作者の心の動き(感動・発見)が加わります。「あ、今、鳥が鳴きながら越えていったな」という、その瞬間の聴覚的なとらえ方を強調する効果があります。

 郷愁を感じている折から、呼子鳥が妻のいる大和(藤原京)の方角へ鳴きながら飛んでゆくのを見て、その鳥に自身の気持ちを伝えさせようという心をもって詠んだ歌です。ここも、旅の寂しさをありのままに表現しており、深い山の中でたった一人、鳥の声に耳を澄ませている作者の孤独な立ち姿が浮かんできます。
 

各巻の主な作者

  • 巻第1
    雄略天皇/舒明天皇/中皇命/天智天皇/天武天皇/持統天皇/額田王/柿本人麻呂/高市黒人/長忌寸意吉麻呂/山上憶良/志貴皇子/長皇子/長屋王
  • 巻第2
    磐姫皇后/天智天皇/天武天皇/藤原鎌足/鏡王女/久米禅師/石川女郎/大伯皇女/大津皇子/柿本人麻呂/有馬皇子/長忌寸意吉麻呂/山上憶良/倭大后/額田王/高市皇子/持統天皇/穂積皇子/笠金村
  • 巻第3
    柿本人麻呂/長忌寸意吉麻呂/高市黒人/大伴旅人/山部赤人/山上憶良/笠金村/湯原王/弓削皇子/大伴坂上郎女/紀皇女/沙弥満誓/笠女郎/大伴駿河麻呂/大伴家持/藤原八束/聖徳太子/大津皇子/手持女王/丹生王/山前王/河辺宮人
  • 巻第4
    額田王/鏡王女/柿本人麻呂/吹黄刀自/大伴旅人/大伴坂上郎女/聖武天皇/安貴王/門部王/高田女王/笠女郎/笠金村/湯原王/大伴家持/大伴坂上大嬢
  • 巻第5
    大伴旅人/山上憶良/藤原房前/小野老/大伴百代
  • 巻第6
    笠金村/山部赤人/車持千年/高橋虫麻呂/山上憶良/大伴旅人/大伴坂上郎女/湯原王/市原王/大伴家持/田辺福麻呂
  • 巻第7
    作者未詳/柿本人麻呂歌集
  • 巻第8
    舒明天皇/志貴皇子/鏡王女/穂積皇子/山部赤人/湯原王/市原王/弓削皇子/笠金村/笠女郎/大原今城/大伴坂上郎女/大伴家持
  • 巻第9
    柿本人麻呂歌集/高橋虫麻呂/田辺福麻呂/笠金村/播磨娘子/遣唐使の母
  • 巻第10~13
    作者未詳/柿本人麻呂歌集
  • 巻第14
    作者未詳
  • 巻第15
    遣新羅使人等/中臣宅守/狭野弟上娘子
  • 巻第16
    穂積親王/境部王/長忌寸意吉麻呂/大伴家持/陸奥国前采女/乞食者
  • 巻第17
    橘諸兄/大伴家持/大伴坂上郎女/大伴池主/大伴書持/平群女郎
  • 巻第18
    橘諸兄/大伴家持/大伴池主/田辺福麻呂/久米広縄/大伴坂上郎女
  • 巻第19
    大伴家持/大伴坂上郎女/久米広縄/蒲生娘子/孝謙天皇/藤原清河
  • 巻第20
    大伴家持/大原今城/防人等

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