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巻第10(索引)<万葉集(掲載歌の索引)古典に親しむ

『万葉集』巻第10(索引)

〈前半〉1812番~2081番

  1. ひさかたの天の香具山このゆふへ霞たなびく春立つらしも
  2. 巻向の檜原に立てる春霞おほにし思はばなづみ来めやも
  3. いにしへの人の植ゑけむ杉が枝に霞たなびく春は来ぬらし
  4. 子らが手を巻向山に春されば木の葉凌ぎて霞たなびく
  5. 玉かぎる夕さり来れば猟人の弓月が岳に霞たなびく
  6. 今朝行きて明日は来なむとねと云ひしかに朝妻山に霞たなびく
  7. 子等が名に懸けのよろしき朝妻の片山ぎしに霞たなびく
  8. うち靡く春立ちぬらし我が門の柳の末に鴬鳴きつ
  9. 梅の花咲ける岡辺に家居れば乏しくもあらず鶯の声
  10. 春霞流るるなへに青柳の枝くひもちて鶯鳴くも
  11. 我が背子を莫越の山の呼子鳥君呼び返せ夜の更けぬとに
  12. 朝ゐでに来鳴くかほ鳥汝だにも君に恋ふれや時終へず鳴く
  13. 冬ごもり春さり来ればあしひきの山にも野にもうぐひす鳴くも
  14. 紫草の根延ふ横野の春野には君を懸けつつうぐひす鳴くも
  15. 春されば妻を求むとうぐひすの木末を伝ひ鳴きつつもとな
  16. 春日なる羽がひの山ゆ佐保の内へ鳴き行くなるは誰れ呼子鳥
  17. 答へぬにな呼び響めそ呼子鳥佐保の山辺を上り下りに
  18. 梓弓春山近く家居れば継ぎて聞くらむ鴬の声
  19. うち靡く春さり来れば小竹の末に尾羽打ち触れて鶯鳴くも
  20. 朝霧にしののに濡れて呼子鳥三船の山ゆ鳴き渡る見ゆ
  21. うちなびく春さり来ればしかすがに天雲霧らひ雪は降りつつ
  22. 梅の花降り覆ふ雪を包み持ち君に見せむと取れば消につつ
  23. 梅の花咲き散り過ぎぬしかすがに白雪庭に降り重きりつつ
  24. 今さらに雪降らめやもかぎろひの燃ゆる春へとなりにしものを
  25. 風交り雪は降りつつしかすがに霞たなびき春さりにけり
  26. 山の際に鴬鳴きてうち靡く春と思へど雪降りしきぬ
  27. 峰の上に降り置ける雪し風の共ここに散るらし春にはあれども
  28. 君がため山田の沢にゑぐ摘むと雪消の水に裳の裾濡れぬ
  29. 梅が枝に鳴きて移ろふ鴬の羽白妙に沫雪ぞ降る
  30. 山高み降り来る雪を梅の花散りかも来ると思ひつるかも
  31. 雪をおきて梅をな恋ひそあしひきの山片付きて家居せる君
  32. 昨日こそ年は果てしか春霞春日の山に早立ちにけり
  33. 冬過ぎて春来るらし朝日さす春日の山に霞たなびく
  34. 鴬の春になるらし春日山霞たなびく夜目に見れども
  35. 霜枯れの冬の柳は見る人のかづらにすべく萌えにけるかも
  36. 浅緑染め懸けたりと見るまでに春の柳は萌えにけるかも
  37. 山の際に雪は降りつつしかすがにこの川柳は萌えにけるかも
  38. 山の際の雪の消ざるをみなぎらふ川の沿ひには萌えにけるかも
  39. 朝な朝な我が見る柳鴬の来居て鳴くべく森に早なれ
  40. 青柳の糸の細しさ春風に乱れぬい間に見せむ子もがも
  41. ももしきの大宮人のかづらけるしだり柳は見れど飽かぬかも
  42. 梅の花取り持ち見れば我が宿の柳の眉し思ほゆるかも
  43. 鶯の木伝ふ梅のうつろへば桜の花の時片設けぬ
  44. 桜花時は過ぎねど見る人の恋ふる盛りと今し散るらむ
  45. 我がかざす柳の糸を吹き乱る風にか妹が梅の散るらむ
  46. 年のはに梅は咲けどもうつせみの世の人の我れし春なかりけり
  47. うつたへに鳥は食まねど縄延へて守らまく欲しき梅の花かも
  48. 馬並めて多賀の山辺を白栲ににほはしたるは梅の花かも
  49. 花咲きて実はならねとも長き日に思ほゆるかも山吹の花
  50. 能登川の水底さへに照るまでに御笠の山は咲きにけるかも
  51. 雪見ればいまだ冬なりしかすがに春霞立ち梅は散りつつ
  52. 去年咲きし久木今咲くいたづらに地にか落ちむ見る人なしに
  53. あしひきの山の際照らす桜花この春雨に散りゆかむかも
  54. うち靡く春さり来らし山の際の遠き木末の咲きゆく見れば
  55. 雉鳴く高円の辺に桜花散りて流らふ見む人もがも
  56. 阿保山の桜の花は今日もかも散り乱ふらむ見る人なしに
  57. かはづ鳴く吉野の川の滝の上の馬酔木の花ぞはしに置くなゆめ
  58. 春雨に争ひかねて我が宿の桜の花は咲きそめにけり
  59. 春雨はいたくな降りそ桜花いまだ見なくに散らまく惜しも
  60. 春されば散らまく惜しき梅の花しましは咲かず含みてもがも
  61. 見わたせば春日の野辺に霞立ち咲きにほへるは桜花かも
  62. いつしかもこの夜の明けむ鴬の木伝ひ散らす梅の花見む
  63. 春霞たなびく今日の夕月夜清く照るらむ高松の野に
  64. 春されば樹の木の暗の夕月夜おぼつかなしも山陰にして
  65. 朝霞春日の暮は木の間より移ろふ月を何時とか待たむ
  66. 春の雨にありけるものを立ち隠り妹が家道にこの日暮らしつ
  67. 今行きて聞くものにもが明日香川春雨降りてたぎつ瀬の音を
  68. 春日野に煙立つ見ゆ娘子らし春野のうはぎ摘みて煮らしも
  69. 春日野の浅茅が上に思ふどち遊ぶ今日の日忘らえめやも
  70. 春霞立つ春日野を行き返り我れは相見むいや年のはに
  71. 春の野に心延べむと思ふどち来し今日の日は暮れずもあらぬか
  72. ももしきの大宮人は暇あれや梅をかざしてここに集へる
  73. 冬過ぎて春し来れば年月は新たなれども人は古りゆく
  74. 物皆は新たしきよしただしくも人は古りにしよろしかるべし
  75. 住吉の里行きしかば春花のいやめづらしき君に逢へるかも
  76. 春日なる御笠の山に月も出でぬかも佐紀山に咲ける桜の花の見ゆべく
  77. 白雪の常敷く冬は過ぎにけらしも春霞たなびく野辺の鴬鳴くも
  78. 我が宿の毛桃の下に月夜さし下心よしうたてこのころ
  79. 春山の友鶯の泣き別れ帰ります間も思ほせ我れを
  80. 冬こもり春咲く花を手折り持ち千たびの限り恋ひわたるかも
  81. 春山の霧に惑へる鴬も我れにまさりて物思はめやも
  82. 出でて見る向ひの岡に本茂く咲きたる花の成らずは止まじ
  83. 霞立つ春の長日を恋ひ暮らし夜も更けゆくに妹も逢はぬかも
  84. 春されば先づ三枝の幸くあらば後にも逢はむな恋ひそ我妹
  85. 春さればしだり柳のとををにも妹は心に乗りにけるかも
  86. 春さればもずの草ぐき見えずとも我れは見やらむ君があたりをば
  87. 貌鳥の間なくしば鳴く春の野の草根の繁き恋もするかも
  88. 春されば卯の花ぐたし我が越えし妹が垣間は荒れにけるかも
  89. 梅の花咲き散る園に我れ行かむ君が使を片待ちがてり
  90. 藤波の咲く春の野に延ふ葛の下よし恋ひば久しくもあらむ
  91. 春の野に霞たなびき咲く花のかくなるまでに逢はぬ君かも
  92. 我が背子に我が恋ふらくは奥山の馬酔木の花の今盛りなり
  93. 梅の花しだり柳に折り交へ花に供へば君に逢はむかも
  94. をみなへし佐紀野に生ふる白つつじ知らぬこともち言はれし我が背
  95. 梅の花我れは散らさじあをによし奈良なる人も来つつ見るがね
  96. かくしあらば何か植ゑけむ山吹の止む時もなく恋ふらく思へば
  97. 春されば水草の上に置く霜の消につつも我れは恋ひわたるかも
  98. 春霞山にたなびきおほほしく妹を相見て後恋ひむかも
  99. 春霞立ちにし日より今日までに我が恋やまず本の繁けば
  100. さ丹つらふ妹を思ふと霞立つ春日もくれに恋ひわたるかも
  101. たまきはる我が山の上に立つ霞立つとも居とも君がまにまに
  102. 見わたせば春日の野辺に立つ霞見まくの欲しき君が姿か
  103. 恋ひつつも今日は暮らしつ霞立つ明日の春日をいかに暮らさむ
  104. 我が背子に恋ひてすべなみ春雨の降るわき知らず出でて来しかも
  105. 今さらに君はい行かじ春雨の心を人の知らざらなくに
  106. 春雨に衣は甚く通らめや 七日し降らば七夜来じとや
  107. 梅の花散らす春雨いたく降る旅にや君が廬りせるらむ
  108. 国栖らが春菜摘むらむ司馬の野のしばしば君を思ふこのころ
  109. 春草の繁き我が恋大海の辺に行く波の千重に積もりぬ
  110. おほほしく君を相見て菅の根の長き春日を恋ひわたるかも
  111. 梅の花咲きて散りなば我妹子を来むか来じかと我が松の木ぞ
  112. 白真弓今春山に行く雲の行きや別れむ恋しきものを
  113. 大夫の伏し居嘆きて作りたるしだり柳のかづらせ我妹
  114. 朝戸出の君が姿をよく見ずて長き春日を恋ひや暮らさむ
  115. 春山の馬酔木の花の悪しからぬ君にはしゑや寄そるともよし
  116. 石上布留の神杉神びにし我れやさらさら恋にあひにける
  117. 狭野方は実にならずとも花のみに咲きて見えこそ恋のなぐさに
  118. 狭野方は実になりにしを今さらに春雨降りて花咲かめやも
  119. 梓弓引津の辺なる莫告藻の花咲くまでに逢はぬ君かも
  120. 川の上のいつ藻の花のいつもいつも来ませ我が背子時じけめやも
  121. 春雨のやまず降る降る我が恋ふる人の目すらを相見せなくに
  122. 我妹子に恋ひつつ居れば春雨のそれも知るごとやまず降りつつ
  123. 相思はぬ妹をやもとな菅の根の長き春日を思ひ暮らさむ
  124. 春さればまづ鳴く鳥の鴬の言先立ちし君をし待たむ
  125. 相思はずあるらむ子ゆゑ玉の緒の長き春日を思ひ暮らさく
  126. ますらをの出で立ち向ふ故郷の神奈備山に明け来れば・・・(長歌)
  127. 旅にして妻恋すらしほととぎす神奈備山にさ夜ふけて鳴く
  128. 霍公鳥汝が初声は我れにもが五月の玉に交へて貫かむ
  129. 朝霞たなびく野辺にあしひきの山霍公鳥いつか来鳴かむ
  130. 朝霧の八重山越えて呼子鳥鳴きや汝が来るやどもあらなくに
  131. 霍公鳥鳴く声聞くや卯の花の咲き散る岡に葛引く娘子
  132. 月夜よみ鳴く霍公鳥見まく欲り我れ草取れり見む人もがも
  133. 藤波の散らまく惜しみ霍公鳥今城の岡を鳴きて越ゆなり
  134. 朝霧の八重山越えて霍公鳥卯の花辺から鳴きて越え来ぬ
  135. 木高くはかつて木植ゑじ霍公鳥来鳴き響めて恋増さらしむ
  136. 逢ひかたき君に逢へる夜霍公鳥他し時ゆは今こそ鳴かめ
  137. 木の暗の夕闇なるに霍公鳥いづくを家と鳴き渡るらむ
  138. 霍公鳥今朝の朝明に鳴きつるは君聞きけむか朝寐か寝けむ
  139. 霍公鳥花橘の枝に居て鳴き響もせば花は散りつつ
  140. うれたきや醜ほととぎす今こそば声の嗄るがに来鳴き響めめ
  141. 今夜のおほつかなきに霍公鳥鳴くなる声の音の遥けさ
  142. 五月山卯の花月夜霍公鳥聞けども飽かずまた鳴かぬかも
  143. 霍公鳥来居も鳴かぬか我がやどの花橘の地に落ちむ見む
  144. 霍公鳥いとふ時なし菖蒲草縵にせむ日こゆ鳴き渡れ
  145. 大和には鳴きてか来らむ霍公鳥汝が鳴くごとになき人思ほゆ
  146. 卯の花の散らまく惜しみ霍公鳥野に出で山に入り来鳴き響もす
  147. 橘の林を植ゑむ霍公鳥常に冬まで棲みわたるがね
  148. 雨晴れの雲にたぐひて霍公鳥春日をさしてこゆ鳴き渡る
  149. 物思ふと寐寝ぬ朝明に霍公鳥鳴きてさ渡るすべなきまでに
  150. 我が衣を君に着せよと霍公鳥我れをうながす袖に来居つつ
  151. 本つ人霍公鳥をやめづらしく今か汝が来し恋ひつつ居れば
  152. かくばかり雨の降らくに霍公鳥卯の花山になほか鳴くらむ
  153. 黙もあらむ時も鳴かなむひぐらしの物思ふ時に鳴きつつもとな
  154. 思ふ子が衣摺らむににほひこそ島の榛原秋立たずとも
  155. 風に散る花橘を袖に受けて君が御跡と偲ひつるかも
  156. かぐはしき花橘を玉に貫き贈らむ妹はみつれてもあるか
  157. ほととぎす来鳴き響もす橘の花散る庭を見む人や誰れ
  158. 我が宿の花橘は散りにけり悔しき時に逢へる君かも
  159. 見わたせば向ひの野辺のなでしこの散らまく惜しも雨な降りそね
  160. 雨間明けて国見もせむを故郷の花橘は散りにけむかも
  161. 野辺見ればなでしこの花咲きにけり我が待つ秋は近づくらしも
  162. 吾妹子に楝の花は散り過ぎず今咲ける如ありこせぬかも
  163. 春日野の藤は散りにて何をかもみ狩の人の折りてかざさむ
  164. 時ならず玉をぞ貫ける卯の花の五月を待たば久しくあるべみ
  165. 卯の花の咲き散る岡ゆ霍公鳥鳴きてさ渡る君は聞きつや
  166. 聞きつやと君が問はせる霍公鳥しののに濡れてこゆ鳴き渡る
  167. 橘の花散る里に通ひなば山霍公鳥響もさむかも
  168. 春さればすがるなす野の霍公鳥ほとほと妹に逢はず来にけり
  169. 五月山花橘に霍公鳥隠らふ時に逢へる君かも
  170. 霍公鳥来鳴く五月の短夜もひとりし寝れば明かしかねつも
  171. 晩蝉は時と鳴けども恋ふるにし手弱女われは時わかず泣く
  172. 人言は夏野の草の繁くとも妹と我れとし携はり寝ば
  173. このころの恋の繁けく夏草の刈り掃へども生ひしくごとし
  174. ま葛延ふ夏野の繁くかく恋ひばまこと我が命常ならめやも
  175. 我れのみやかく恋すらむ杜若丹つらふ妹はいかにかあるらむ
  176. 片縒りに糸をぞ我が縒る我が背子が花橘を貫かむと思ひて
  177. 鴬の通ふ垣根の卯の花の憂きことあれや君が来まさぬ
  178. 卯の花の咲くとはなしにある人に恋ひやわたらむ片思にして
  179. 我れこそば憎くもあらめ我がやどの花橘を見には来じとや
  180. 霍公鳥来鳴き響もす岡辺なる藤波見には君は来じとや
  181. 隠りのみ恋ふれば苦しなでしこの花に咲き出よ朝な朝な見む
  182. 外のみに見つつ恋ひなむ紅の末摘花の色に出でずとも
  183. 夏草の露別け衣着けなくに我が衣手の干る時もなき
  184. 六月の地さへ裂けて照る日にも我が袖干めや君に逢はずして
  185. 天の川水さへに照る舟泊てて舟なる人は妹と見えきや
  186. ひさかたの天の川原にぬえ鳥のうら泣きましつすべなきまでに
  187. 我が恋を夫は知れるを行く舟の過ぎて来べしや言も告げなむ
  188. 赤らひく色ぐはし子をしば見れば人妻ゆゑに我れ恋ひぬべし
  189. 天の川安の渡りに舟浮けて秋立つ待つと妹に告げこそ
  190. 大空ゆ通ふ我れすら汝がゆゑに天の川道をなづみてぞ来し
  191. 八千桙の神の御代よりともし妻人知りにけり告げてし思へば
  192. 我が恋ふる丹のほの面わ今夕もか天の川原に石枕まく
  193. 己夫にともしき子らは泊てむ津の荒礒巻きて寝む君待ちかてに
  194. 天地と別れし時ゆ己が妻しかぞ離れてあり秋待つ我れは
  195. 彦星は嘆かす妻に言だにも告げにぞ来つる見れば苦しみ
  196. ひさかたの天つ印と水無し川隔てて置きし神代し恨めし
  197. ぬばたまの夜霧に隠り遠くとも妹が伝へは早く告げこそ
  198. 汝が恋ふる妹の命は飽き足らに袖振る見えつ雲隠るまで
  199. 夕星も通ふ天道をいつまでか仰ぎて待たむ月人壮士
  200. 天の川い向ひ立ちて恋しらに言だに告げむ妻どふまでは
  201. 白玉の五百つ集ひを解きもみず我れは寝かてぬ逢はむ日待つに
  202. 天の川水蔭草の秋風に靡かふ見れば時は来にけり
  203. 我が待ちし秋萩咲きぬ今だにもにほひに行かな彼方人に
  204. 我が背子にうら恋ひ居れば天の川夜舟漕ぐなる楫の音聞こゆ
  205. ま日長く恋ふる心ゆ秋風に妹が音聞こゆ紐解き行かな
  206. 恋ひしくは日長きものを今だにもともしむべしや逢ふべき夜だに
  207. 天の川去年の渡りで移ろへば川瀬を踏むに夜ぞ更けにける
  208. 古ゆあげてし服も顧みず天の川津に年ぞ経にける
  209. 天の川夜船を漕ぎて明けぬとも逢はむと思へや袖交へずあらむ
  210. 遠妻と手枕交へて寝たる夜は鶏がねな鳴き明けば明けぬとも
  211. 相見らく飽き足らねども稲の目の明けさりにけり舟出せむ妻
  212. さ寝そめていくだもあらねば白栲の帯乞ふべしや恋も過ぎねば
  213. 万代にたづさはり居て相見とも思ひ過ぐべき恋にあらなくに
  214. 万代に照るべき月も雲隠り苦しきものぞ逢はむと思へど
  215. 白雲の五百重に隠り遠くとも宵さらず見む妹があたりは
  216. 我がためと織女のそのやどに織る白栲は織りてけむかも
  217. 君に逢はず久しき時ゆ織る服の白栲衣垢づくまでに
  218. 天の川楫の音聞こゆ彦星と織女と今夜逢ふらしも
  219. 秋されば川霧立てる天の川川に向き居て恋ふる夜ぞ多き
  220. よしゑやし直ならずともぬえ鳥のうら泣き居りと告げむ子もがも
  221. 一年に七日の夜のみ逢ふ人の恋も過ぎねば夜は更けゆくも
  222. 天の川安の川原定而神競者磨待無
  223. 織女の五百機立てて織る布の秋さり衣誰れか取り見む
  224. 年にありて今か巻くらむぬばたまの夜霧隠れる遠妻の手を
  225. 我が待ちし秋は来りぬ妹と我れと何事あれぞ紐解かずあらむ
  226. 年の恋今夜尽して明日よりは常のごとくや我が恋ひ居らむ
  227. 逢はなくは日長きものを天の川隔ててまたや我が恋ひ居らむ
  228. 恋しけく日長きものを逢ふべくある宵だに君が来まさずあるらむ
  229. 彦星と織女と今夜逢ふ天の川門に波立つなゆめ
  230. 秋風の吹きただよはす白雲は織女の天つ領巾かも
  231. しばしばも相見ぬ君を天の川舟出早せよ夜の更けぬ間に
  232. 秋風の清き夕に天の川舟漕ぎ渡る月人壮士
  233. 天の川霧立ちわたり彦星の楫の音聞こゆ夜の更けゆけば
  234. 君が舟今漕ぎ来らし天の川霧立ちわたるこの川の瀬に
  235. 秋風に川波立ちぬしましくは八十の舟津にみ舟留めよ
  236. 天の川川音清し彦星の秋漕ぐ舟の波のさわきか
  237. 天の川川門に立ちて我が恋ひし君来ますなり紐解き待たむ
  238. 天の川川門に居りて年月を恋ひ来し君に今夜逢へるかも
  239. 明日よりは我が玉床をうち掃ひ君と寐寝ずてひとりかも寝む
  240. 天の原行きて射てむと白真弓引きて隠れる月人壮士
  241. この夕降りくる雨は彦星の早や漕ぐ舟の櫂の散りかも
  242. 天の川 八十瀬霧らへり彦星の時待つ舟は今し漕ぐらし
  243. 風吹きて川波立ちぬ引き船に渡りも来ませ夜の更けぬ間に
  244. 天の川遠き渡りはなけれども君が舟出は年にこそ待て
  245. 天の川打橋渡せ妹が家道やまず通はむ時待たずとも
  246. 月重ね我が思ふ妹に逢へる夜は今し七夜を継ぎこせぬかも
  247. 年に装ふ我が舟漕がむ天の川風は吹くとも波立つなゆめ
  248. 天の川波は立つとも我が舟はいざ漕ぎ出でむ夜の更けぬ間に
  249. ただ今夜逢ひたる子らに言どひもいまだせずしてさ夜ぞ明けにける
  250. 天の川白波高し我が恋ふる君が舟出は今しすらしも
  251. 機物の蹋木持ち行きて天の川打橋渡す君が来むため
  252. 天の川霧立ち上る織女の雲の衣のかへる袖かも
  253. いにしへゆ織りてし服をこの夕衣に縫ひて君待つ我れを
  254. 足玉も手玉もゆらに織る服を君が御衣に縫ひもあへむかも
  255. 月日択り逢ひてしあれば別れまく惜しくある君は明日さへもがも
  256. 天の川渡り瀬深み舟浮けて漕ぎ来る君が楫の音聞こゆ
  257. 天の原振り放け見れば天の川霧立ちわたる君は来ぬらし
  258. 天の川瀬ごとに幣をたてまつる心は君を幸く来ませと
  259. ひさかたの天の川津に舟浮けて君待つ夜らは明けずもあらぬか
  260. 天の川なづさひ渡る君が手もいまだ枕かねば夜の更けぬらく
  261. 渡り守舟渡せをと呼ぶ声の至らねばかも楫の音のせぬ
  262. ま日長く川に向き立ちありし袖今夜巻かむと思はくがよさ
  263. 天の川渡り瀬ごとに思ひつつ来しくもしるし逢へらく思へば
  264. 人さへや見継がずあらむ彦星の妻呼ぶ舟の近づき行くを
  265. 天の川瀬を早みかもぬばたまの夜は更けにつつ逢はぬ彦星
  266. 渡り守舟早渡せ一年にふたたび通ふ君にあらなくに
  267. 玉葛絶えぬものからさ寝らくは年の渡りにただ一夜のみ
  268. 恋ふる日は日長きものを今夜だにともしむべしや逢ふべきものを
  269. 織女の今夜逢ひなば常のごと明日を隔てて年は長けむ
  270. 天の川棚橋渡せ織女のい渡らさむに棚橋渡せ

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