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巻第14(索引)<万葉集(掲載歌の索引)古典に親しむ

『万葉集』巻第14(索引)

  1. 夏麻引く海上潟の沖つ洲に船は留めむさ夜ふけにけり
  2. 葛飾の真間の浦廻を漕ぐ船の船人騒く波立つらしも
  3. 筑波嶺の新桑繭の衣はあれど君が御衣しあやに着欲しも
  4. 筑波嶺に雪かも降らる否をかも愛しき児ろが布乾さるかも
  5. 信濃なる須我の荒野にほととぎす鳴く声聞けは時過ぎにけり
  6. 麁玉の伎倍の林に汝を立てて行きかつましじ寐を先立たね
  7. 伎倍人の斑衾に綿さはだ入りなましもの妹が小床に
  8. 天の原富士の柴山木の暗の時ゆつりなば逢はずかもあらむ
  9. 富士の嶺のいや遠長き山道をも妹許とへば気によばず来ぬ
  10. 霞ゐる富士の山びに我が来なばいづち向きてか妹が嘆かむ
  11. さ寝らくは玉の緒ばかり恋ふらくは富士の高嶺の鳴沢のごと
  12. 駿河の海おし辺に生ふる浜つづら汝を頼み母に違ひぬ
  13. 伊豆の海に立つ白波のありつつも継ぎなむものを乱れしめめや
  14. 足柄の彼面此面にさす罠のかなるましづみ子ろ我れ紐解く
  15. 相模嶺の小峰見退くし忘れ来る妹が名呼びて我を音し泣くな
  16. わが背子を大和へ遣りてまつしだす足柄山の杉の木の間か
  17. 足柄の箱根の山に粟蒔きて実とはなれるを逢はなくも怪し
  18. 鎌倉の見越の崎の岩崩えの君が悔ゆべき心は持たじ
  19. ま愛しみさ寝に我は行く鎌倉の水無瀬川に潮満つなむか
  20. 百つ島 足柄小舟歩き多み目こそ離るらめ心は思)へど
  21. 足柄の土肥の河内に出づる湯の世にもたよらに子ろが言はなくに
  22. 足柄の麻万の小菅の菅枕あぜかまかさむ子ろせ手枕
  23. 足柄の箱根の嶺ろのにこ草の花妻なれや紐解かず寝む
  24. 足柄の御坂畏み曇り夜の我が下ばへをこち出つるかも
  25. 相模道の余呂伎の浜の真砂なす児らは愛しく思はるるかも
  26. 多摩川にさらす手作りさらさらに何そこの児のここだ愛しき
  27. 武蔵野に占部肩焼きまさでにも告らぬ君が名占に出にけり
  28. 武蔵野のをぐきが雉立ち別れ去にし宵より背ろに逢はなふよ
  29. 恋しけば袖も振らむを武蔵野のうけらが花の色に出なゆめ
  30. 武蔵野の草はもろ向きかもかくも君がまにまに我は寄りにしを
  31. 入間道の於保屋が原のいはゐつら引かばぬるぬる我にな絶えそね
  32. 我が背子を何どかも言はむ武蔵野のうけらが花の時なきものを
  33. 埼玉の津に居る船の風をいたみ綱は絶ゆとも言な絶えそね
  34. 夏麻引く宇奈比をさして飛ぶ鳥の至らむとぞよ我が下延へし
  35. 馬来田の嶺ろの笹葉の露霜の濡れて我来なば汝は恋ふばぞも
  36. 馬来田の嶺ろに隠り居かくだにも国の遠かば汝が目欲りせむ
  37. 葛飾の真間の手児奈をまことかも我に寄すとふ真間の手児奈を
  38. 葛飾の真間の手児奈がありしかば真間のおすひに波もとどろに
  39. にほ鳥の葛飾早稲を饗すともその愛しきを外に立てめやも
  40. 足の音せず行かむ駒もが葛飾の真間の継橋やまず通はむ
  41. 筑波嶺の嶺ろに霞居過ぎかてに息づく君を率寝て遣らさね
  42. 妹が門いや遠そきぬ筑波山隠れぬ程に袖は振りてな
  43. 筑波嶺にかか鳴く鷲の音のみをか泣きわたりなむ逢ふとはなしに
  44. 筑波嶺にそがひに見ゆる葦穂山悪しかるとがもさね見えなくに
  45. 筑波嶺の岩もとどろに落つる水世にもたゆらに我が思はなくに
  46. 筑波嶺のをてもこのもに守部据ゑ母い守れども魂ぞ合ひにける
  47. さ衣の小筑波嶺ろの山の崎忘ら来ばこそ汝を懸けなはめ
  48. 小筑波の嶺ろに月立し間夜はさはだなりぬをまた寝てむかも
  49. 小筑波の茂き木の間よ立つ鳥の目ゆか汝を見むさ寝ざらなくに
  50. 常陸なる浪逆の海の玉藻こそ引けば絶えすれあどか絶えせむ
  51. 人皆の言は絶ゆとも埴科の石井の手児が言な絶えそね
  52. 信濃道は今の墾り道 刈りばねに足踏ましなむ沓はけ我が背
  53. 信濃なる筑摩の川の細石も君し踏みてば玉と拾はむ
  54. 中麻奈に浮き居る船の漕ぎ出なば逢ふこと難し今日にしあらずは
  55. 日の暮に碓氷の山を越ゆる日は背なのが袖もさやに振らしつ
  56. 我が恋はまさかも愛し草枕多胡の入野の奥も愛(かな)しも
  57. 上つ毛野安蘇の真麻群)かき抱き寝れど飽かぬをあどか我がせむ
  58. 上つ毛野乎度の多杼里が川路にも子らは逢はなも一人のみして
  59. 上つ毛野佐野の茎立ち折りはやし我れは待たむゑ来とし来ずとも
  60. 上つ毛野まぐはしまとに朝日さしまぎらはしもなありつつ見れば
  61. 新田山嶺にはつかなな我に寄そり間なる子らしあやに愛しも
  62. 伊香保ろに天雲い継ぎかぬまづく人とおたはふいざ寝しめとら
  63. 伊香保ろの沿ひの榛原ねもころに奥をな兼ねそまさかしよかば
  64. 多胡の嶺に寄せ綱延へて寄すれどもあに来やしづしその顔よきに
  65. 上つ毛野久路保の嶺ろの葛葉がた愛しけ子らにいや離り来も
  66. 利根川の川瀬も知らず直渡り波にあふのす逢へる君かも
  67. 伊香保ろの八尺の堰塞に立つ虹の現はろまでもさ寝をさ寝てば
  68. 上つ毛野伊香保の沼に植ゑ小水葱かく恋ひむとや種求めけむ
  69. 上つ毛野可保夜が沼のいはゐつら引かばぬれつつ我をな絶えそね
  70. 上つ毛野伊奈良の沼の大藺草外に見しよは今こそまされ
  71. 上つ毛野佐野田の苗の群苗に事は定めつ今はいかにせも
  72. 伊香保背よ汝が泣かししも思ひ出ろ隈越しつと忘れ為なふも
  73. 上つ毛野佐野の舟橋取り離し親は放くれど我は離るがへ
  74. 伊香保嶺に雷な鳴りそね我が上には故はなけども子らによりてぞ
  75. 伊香保風吹く日吹かぬ日ありと言へど我が恋のみし時なかりけり
  76. 上つ毛野伊香保の嶺ろに降ろ雪の行き過ぎかてぬ妹が家のあたり
  77. 下つ毛野三毳の山のこ楢のす目ぐはし児ろは誰が笥か持たむ
  78. 下つ毛野安蘇の川原よ石踏まず空ゆと来ぬよ汝が心 告れ
  79. 会津嶺の国をさ遠み逢はなはば偲ひにせもと紐結ばさね
  80. 筑紫なるにほふ子ゆゑに陸奥の可刀利娘子の結ひし紐解く
  81. 安達太良の嶺に臥す鹿猪のありつつも我れは至らむ寝処な去りそね
  82. 遠江引佐細江の水脈つくし我れを頼めてあさましものを
  83. 志太の浦を朝漕ぐ船は由なしに漕ぐらめかもよ由こさるらめ
  84. 足柄の安伎奈の山に引こ船の後引かしもよここば児がたに
  85. 足柄の吾を可鶏山のかづの木の吾をかづさねも門さかずとも
  86. 薪伐る鎌倉山の木垂る木をまつと汝が言はば恋ひつつやあらむ
  87. 上つ毛野阿蘇山つづら野を広み延ひにしものをあぜか絶えせむ
  88. 伊香保ろの沿ひの榛原我が衣に着きよらしもよひたへと思へば
  89. しらとほふ小新田山の守る山のうら枯れせなな常葉にもがも
  90. 陸奥の安達太良真弓はじき置きて反らしめきなば弦はかめかも
  91. 都武賀野に鈴が音聞こゆ可牟思太の殿の仲子し鳥猟すらしも
  92. 鈴が音の早馬駅家の堤井の水を賜へな妹が直手よ
  93. この川に朝菜洗ふ子汝れも我れもよちをぞ持てるいで子給りに
  94. ま遠くの雲居に見ゆる妹が家にいつか至らむ歩め我が駒
  95. 東道の手児の呼坂越えがねて山にか寝むも宿りはなしに
  96. うらもなく我が行く道に青柳の張りて立てれば物思ひ出つも
  97. 伎波都久の岡の茎韮我れ摘めど籠にも満たなふ背なと摘まさね
  98. 港の葦が中なる玉小菅刈り来我が背子床の隔しに
  99. 妹なろが使ふ川津のささら荻葦と人言語りよらしも
  100. 草蔭の安努な行かむと墾りし道安努は行かずて荒草立ちぬ
  101. 花散らふこの向つ峰の乎那の峰の洲につくまで君が代もがも
  102. 白栲の衣の袖を麻久良我よ海人漕ぎ来見ゆ波立つなゆめ
  103. 乎久佐壮丁と乎具佐助丁と潮舟の並べて見れば乎具佐勝ちめり
  104. 左奈都良の岡に粟蒔き愛しきが駒は食ぐとも我はそと追はじ
  105. おもしろき野をばな焼きそ古草に新草交り生ひは生ふるがに
  106. 風の音の遠き我妹が着せし衣手本のくだりまよひ来にけり
  107. 庭に立つ麻手小衾今夜だに夫寄しこせね麻手小衾
  108. 恋しけば来ませ我が背子垣つ柳末摘み枯らし我れ立ち待たむ
  109. うつせみの八十言のへは繁くとも争ひかねて我を言なすな
  110. うち日さす宮の我が背は大和女の膝枕くごとに我を忘らすな
  111. 汝背の子や等里の岡道し中だ折れ我を音し泣くよ息づくまでに
  112. 稲つけば皹る我が手を今夜もか殿の若子が取りて嘆かむ
  113. 誰れぞこの屋の戸押そぶる新嘗に我が背を遣りて斎ふこの戸を
  114. 何といへかさ寝に逢はなくに真日暮れて宵なは来なに明けぬ時来る
  115. あしひきの山沢人の人さはにまなと言ふ子があやに愛しさ
  116. ま遠くの野にも逢はなむ心なく里の真中に逢へる背なかも
  117. 人言の繁きによりて真小薦の同じ枕は我はまかじやも
  118. 高麗錦紐解き放けて寝るがへに何どせろとかもあやに愛しき
  119. ま愛しみ寝れば言に出さ寝なへば心の緒ろに乗りて愛しも
  120. 奥山の真木の板戸をとどと押て我が開かむに入り来て寝さね
  121. 山鳥の尾ろの初麻に鏡懸け唱ふべみこそ汝に寄そりけめ
  122. 夕占にも今夜と告らろ我が背なは何故ぞも今夜寄しろ来まさぬ
  123. 相見ては千年や去ぬるいなをかも我れや然思ふ君待ちがてに
  124. しまらくは寝つつもあらむを夢のみにもとな見えつつ我を音し泣くる
  125. 人妻とあぜかそを言はむ然らばか隣の衣を借りて着なはも
  126. 左努山に打つや斧音の遠かども寝もとか子ろが面に見えつる
  127. 植ゑ竹の本さへ響み出でて去なばいづし向きてか妹が嘆かむ
  128. 恋ひつつも居らむとすれど遊布麻山隠れし君を思ひかねつも
  129. うべ子なは我ぬに恋ふなも立と月のぬがなへ行けば恋しかるなも
  130. 東道の手児の呼坂越えて去なば我(あ)れは恋ひむな後は逢ひぬとも
  131. 遠しとふ故奈の白嶺に逢ほしだも逢はのへしだも汝にこそ寄され
  132. 安可見山草根刈り除け逢はすがへ争ふ妹しあやにかなしも
  133. 大君の命畏み愛し妹が手枕離れ夜立ち来のかも
  134. あり衣のさゑさゑしづみ家の妹に物言はず来にて思ひ苦しも
  135. 韓衣裾のうち交へ逢はねども異しき心を我が思はなくに
  136. 昼解けば解けなへ紐の我が背なに相寄るとかも夜解けやすけ
  137. 麻苧らを麻笥にふすさに績まずとも明日着せさめやいざせ小床に
  138. 剣大刀身に添ふ妹を取り見がね音をぞ泣きつる手児にあらなくに
  139. 愛し妹を弓束並べ巻きもころ男のこととし言はばいや勝たましに
  140. 梓弓末に玉巻きかく為為ぞ寝なななりにし奥を兼ぬ兼ぬ
  141. 生ふ楉この本山の真柴にも告らぬ妹が名象に出でむかも
  142. 梓弓欲良の山辺の繁かくに妹ろを立ててさ寝処払ふも
  143. 梓弓末は寄り寝む正香こそ人目を多み汝をはしに置けれ
  144. 柳こそ伐れば生えすれ世の人の恋に死なむをいかにせよとぞ
  145. 小山田の池の堤にさす柳成りも成らずも汝と二人はも
  146. 遅速も汝をこそ待ため向つ峰の椎の小枝の逢ひは違はじ
  147. 子持山若かへるでのもみつまで寝もと我は思ふ汝はあどか思ふ
  148. 伊波保ろの沿ひの若松限りとや君が来まさぬうらもとなくも
  149. 橘の古婆の放髪が思ふなむ心愛しいで吾は行かな
  150. 川上の根白高萱あやにあやにさ寝さ寝てこそ言に出にしか
  151. 海原の根柔ら小菅あまたあれば君は忘らす我れ忘るれや
  152. 岡に寄せ我が刈る萱のさね萱のまことなごやは寝ろとへなかも
  153. 紫草は根をかも終ふる人の子のうら愛しけを寝を終へなくに
  154. 安波峰ろの峰ろ田に生はるたはみづら引かばぬるぬる我を言な絶え
  155. 我が目妻人は放くれど朝顔のとしさへこごと我は離るがへ
  156. 安齊可潟潮干のゆたに思へらばうけらが花の色に出めやも
  157. 春へ咲く藤の末葉のうら安にさ寝る夜ぞなき子ろをし思へば
  158. うちひさつ宮の瀬川のかほ花の恋ひてか寝らむ昨夜も今夜も
  159. 新室のこどきに至ればはだすすき穂に出し君が見えぬこのころ
  160. 谷狭み峰に延ひたる玉葛絶えむの心我が思はなくに
  161. 芝付の御宇良崎なるねつこ草相見ずあらば我れ恋ひめやも
  162. 栲衾白山風の寝なへども子ろが襲着のあろこそ良しも
  163. み空行く雲にもがもな今日行きて妹に言問ひ明日帰り来む
  164. 青嶺ろにたなびく雲のいさよひに物をぞ思ふ年のこのころ
  165. 一嶺ろに言はるものから青嶺ろにいさよふ雲の寄そり妻はも
  166. 夕さればみ山を去らぬ布雲のあぜか絶えむと言ひし子ろはも
  167. 高き嶺に雲の付くのす我れさへに君に付きなな高嶺と思ひて
  168. 我が面の忘れむしだは国溢り嶺に立つ雲を見つつ偲はせ
  169. 対馬の嶺は下雲あらなふ可牟の嶺にたなびく雲を見つつ偲はも
  170. 白雲の絶えにし妹をあぜせろと心に乗りてここば愛しけ
  171. 岩の上にいかかる雲のかのまづく人ぞおたはふいざ寝しめとら
  172. 汝が母に嘖られ我は行く青雲の出で来我妹子相見て行かむ
  173. 面形の忘れむ時は大野ろにたなびく雲を見つつ偲はむ
  174. 烏とふ大軽率鳥の真実にも来まさぬ君をころくとぞ鳴く
  175. 昨夜こそは児ろとさ寝しか雲の上ゆ鳴き行く鶴の間遠く思ほゆ
  176. 坂越えて安倍の田の面に居る鶴のともしき君は明日さへもがも
  177. 真小薦の節の間近くて逢はなへば沖つ真鴨の嘆きぞ我がする
  178. 水久君野に鴨の這ほのす子ろが上に言緒ろ延へていまだ寝なふも
  179. 沼二つ通は鳥が巣我が心二行くなもとなよ思はりそね
  180. 沖に棲も小鴨のもころ八尺鳥息づく妹を置きて来のかも
  181. 水鳥の立たむ装ひに妹のらに物言はず来にて思ひかねつも
  182. 等夜の野に兎狙はりをさをさも寝なへ児ゆゑに母にころはえ
  183. さ雄鹿の伏すや草むら見えずとも子ろが金門よ行かくし良しも
  184. 妹をこそ相見に来しか眉引きの横山辺ろの猪鹿なす思へる
  185. 春の野に草食む駒の口やまず我を偲ふらむ家の子ろはも
  186. 人の子の愛しけ時は浜洲鳥足悩む駒の惜しけくもなし
  187. 赤駒が門出をしつつ出でかてにせしを見立てし家の子らはも
  188. 己が命をおほにな思ひそ庭に立ち笑ますが故に駒に逢ふものを
  189. 赤駒を打ちてさ緒引き心引きいかなる背なか我がり来むと言ふ
  190. 柵越しに麦食む小馬のはつはつに相見し児らしあやに愛しも
  191. 広橋を馬越しがねて心のみ妹がり遣りて我はここにして
  192. 崩岸の上に駒を繋ぎて危ほかど人妻子ろを息に我がする
  193. 左和多里の手児にい行き逢ひ赤駒が足掻きを速み言問はず来ぬ
  194. 崩岸辺から駒の行ごのす危はとも人妻子ろを目ま行かせらふも
  195. 細石に駒を馳させて心痛み我が思ふ妹が家のあたりかも
  196. むろがやの都留の堤の成りぬがに子ろは言へども未だ寝なくに
  197. 阿須可川下濁れるを知らずして背ななと二人さ寝て悔しも
  198. 安須可川堰くと知りせばあまた夜も率寝て来ましを塞くと知りせば
  199. 青柳の張らろ川門に汝を待つと清水は汲まず立ち処平すも
  200. あぢの住む須沙の入江の隠り沼のあな息づかし見ず久にして
  201. 鳴る瀬ろに木屑の寄すなすいとのきて愛しけ背ろに人さへ寄すも
  202. 多由比潟潮満ちわたるいづゆかも愛しき背ろが我がり通はむ
  203. 押して否と稲は搗かねど波の穂のいたぶらしもよ昨夜ひとり寝て
  204. 阿遅可麻の潟にさく波平瀬にも紐解くものか愛しけを置きて
  205. 松が浦に騒ゑ群立ち真人言思ほすなもろ我が思ほのすも
  206. 味鴨の可家の湊に入る潮のこてたずくもが入りて寝まくも
  207. 妹が寝る床のあたりに岩ぐくる水にもがもよ入りて寝まくも
  208. 麻久良我の許我の渡りの韓楫の音高しもな寝なへ子ゆゑに
  209. 潮船の置かれば愛しさ寝つれば人言繁し汝を何かもしむ
  210. 悩ましけ人妻かもよ漕ぐ舟の忘れはせなないや思ひ増すに
  211. 逢はずして行かば惜しけむ麻久良我の許我漕ぐ船に君も逢はぬかも
  212. 大船を舳ゆも艫ゆも堅めてし許曽の里人顕はさめかも
  213. 真金吹く丹生のま朱の色に出て言はなくのみぞ我が恋ふらくは
  214. 金門田を荒垣間ゆ見日が照れば雨を待とのす君をと待とも
  215. 荒礒やに生ふる玉藻のうち靡きひとりや寝らむ我を待ちかねて
  216. 比多潟の礒のわかめの立ち乱え我をか待つなも昨夜も今夜も
  217. 小菅ろの浦吹く風のあどすすか愛しけ児ろを思ひ過ごさむ
  218. かの子ろと寝ずやなりなむはだすすき宇良野の山に月片寄るも
  219. 我妹子に我が恋ひ死なばそわへかも神に負ほせむ心知らずて
  220. 置きて行かば妹はま愛し持ちて行く梓の弓の弓束にもが
  221. 後れ居て恋ひば苦しも朝狩の君が弓にもならましものを
  222. 防人に立ちし朝明の金門出に手離れ惜しみ泣きし児らはも
  223. 葦の葉に夕霧立ちて鴨が音の寒き夕し汝をば偲はむ
  224. 己妻を人の里に置きおほほしく見つつそ来ぬるこの道の間
  225. あど思へか阿自久麻山の弓絃葉の含まる時に風吹かずかも
  226. あしひきの山葛蘿ましばにも得がたき蘿を置きや枯らさむ
  227. 小里なる花橘を引き攀ぢて折らむとすれどうら若みこそ
  228. 美夜自呂のすかへに立てるかほが花な咲き出でそね隠めて偲はむ
  229. 苗代の小水葱が花を衣に摺りなるるまにまに何ぜか愛しけ
  230. 愛し妹をいづち行かめと山菅の背向に寝しく今し悔しも

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万葉集・竹取物語・枕草子などの原文と現代語訳。