本文へスキップ

源氏物語

 源氏物語

目 次

各帖のあらすじ

桐 壺 桐壺更衣 光源氏の誕生若宮三歳、御袴着の儀桐壺更衣の死桐壺の葬儀帝の弔問蓬生の宿帝のご悲嘆若宮の美貌と才覚藤壺宮の入内高麗の人相見光る君とかがやく日の宮源氏の元服左大臣家と右大臣家
帚 木 光源氏の性分五月雨の夜頭中将の女性論左馬頭の女性論頭中将、昔の恋愛話空蝉と契る空蝉の煩悶
空 蝉 空蝉と間違えて軒端荻と契る源氏、邸に帰る
夕 顔 夕顔の咲く辺り夕顔の歌六条の御方に宿る夕顔と契る夜半、もののけ現る
若 紫 北山の修行者垣間見僧都に紫の上の後見を申し出る葵の上との冷めた関係夏四月の短夜の密通藤壺の懐妊紫の上を連れ出す紫の上に手習いを教える紫の上を愛玩
末摘花 常陸宮の娘の噂を聞く 頭の中将に見つかる雪の激しく降る日末摘花の醜貌末摘花を援助正月七日の夜、末摘花を訪ねる二条院で紫の君と
紅葉賀 御前で青海波を舞う朱雀院の行幸当日若宮の誕生源氏と藤壺の苦悩
花 宴 花の宴朧月夜の君
御代変わり車争い物の怪の出現男子誕生六条御息所の苦悩葵の上の死紫の上の成長紫の上と新枕
賢 木 源氏、御息所を訪ねる桐壺院の崩御藤壺の出家朧月夜との逢瀬、発覚
花散里 麗景殿女御との昔語り妹君と語る
須 磨 源氏、須磨退去を決意左大臣邸で別れを惜しむ須磨での侘び住まい須磨の秋明石入道の思い暴風雨に襲われる
明 石 源氏、明石に渡る入道、娘のことを語る源氏、明石の上と契る源氏に赦免の宣旨下る
澪 標 明石の姫君誕生紫の上の嫉妬住吉参詣
蓬 生 源氏、末摘花邸を通りかかる末摘邸に入る末摘花の生活を援助
関 屋 空蝉、源氏一行と行き合う空蝉、夫と死別、出家
絵 合 帝の御前での絵合
松 風 東の院、完成明石の上、とまどう明石の上ら、明石の浦を出立
薄 雲 母娘の別れ藤壺宮、崩御帝、出生の秘密を知る帝譲位の意春秋優劣論
朝 顔 朝顔の姫君との贈答紫の上と婦人評を交わす
乙 女 源氏の教育観夕霧、勉学に励む夕霧と雲居雁夕霧、進士に及第六条院成る
玉 鬘 夕顔を回想若君の筑紫下向少弐の遺言玉鬘一行の上京玉鬘、右近と再会乳母の依頼
初 音 六条院の新春新春の明石の姫君と花散里
胡 蝶 源氏、玉鬘に迫る
源氏、蛍火で玉鬘を見せる物語論内大臣の行方不明の娘
常 夏 源氏と玉鬘の唱和源氏の思案内大臣と近江の君
篝 火 近江の君の噂初秋、源氏と玉鬘夕霧と柏木兄弟参上
野 分 野分の襲来 夕霧、紫の上を垣間見る玉鬘を見舞う
行 幸 大原野行幸源氏と内大臣の対面
藤 袴 玉鬘の悩み夕霧の申し入れ夕霧、源氏に報告懸想人の失望髭黒大将、玉鬘に執心
真木柱 髭黒と北の方姫君、柱に和歌を残す
梅 枝 明石の姫君の裳着の準備裳着の式源氏の書家評左衛門の督の書
藤裏葉 内大臣邸の藤花の宴六条院行幸
若菜上 朱雀院、出家を志す源氏、女三の宮の後見人になる紫の上の悩み明石の女御と明石入道柏木、女三の宮を垣間見る
若菜下 冷泉帝譲位女楽の夜源氏、紫の上と語らう紫の上、病に倒れる柏木、女三宮と密通紫の上危篤、六条御息所の死霊現る紫の上、小康を得る源氏、柏木の文を発見源氏の煩悶柏木の苦悩
柏 木 柏木、死を思う柏木、女三の宮と歌の贈答女三の宮、男児を出産女三の宮、出家を望む柏木の死
横 笛 柏木の一周忌 夕霧、一条宮を訪れる柏木遺愛の横笛
鈴 虫 六条院における鈴虫の宴
夕 霧 夕霧、落葉の宮と歌の贈答一条御息所からの手紙夕霧、落葉の宮と契る
御 法 紫の上、出家を志す幼き者との別れ紫の上の死紫の上の死に顔に見入る紫の上の葬儀
源氏、蛍兵部卿宮と唱和源氏、女房と語る源氏、わが生涯を思う匂宮、遺愛の桜をいたわる源氏、明石の君を訪ねる紫の上の遺文を焼く仏名会の日
※「宇治十帖」は割愛します。

各帖のあらすじ

【PR】

おもな登場人物

主人公
  • 光源氏
    桐壺帝の第二皇子。母は桐壺更衣。母とは幼いころに死別。美質に恵まれるが、皇位継承はかなわず、源氏の姓を賜わって臣籍に下る。
光源氏の両親
  • 桐壺帝
    光源氏の父。身分の低い桐壺更衣を寵愛し、その忘れ形見の源氏を一時は東宮にとも願ったが、将来を考えて臣籍降下させる。醍醐天皇がモデルとされる。
  • 桐壺更衣
    光源氏の母。故按察大納言の娘。桐壺帝の寵愛を一身に受けたが、源氏が3歳の時に病で死去。
光源氏の兄弟
  • 朱雀帝
    桐壺帝の第一皇子で、光源氏の異母弟。母は弘徽殿女御。源氏との関係を知りつつも、朧月夜を寵愛。やさしく穏やかな性格。
光源氏の女君たち
  • 藤壺
    桐壺帝の中宮。亡き桐壺の更衣に酷似するというので源氏に慕われ、不義の子を産む。その後も続く源氏の執拗な求愛を避け、桐壺帝が亡くなった後に出家。
  • 葵の上
    源氏の最初の正室。父は左大臣。源氏の4歳年上で、結婚当初から関係は冷え切っており、夕霧を産んだのち、反感を買っていた六条の御息所の生霊に呪われ急死。
  • 空蝉
    老いた受領伊予介の後妻。源氏とは一夜のみの過ち。身分が釣り合わないことに悩み、後はずっと拒否し続ける。やがて夫の任地へ共に下る。後年、出家。
    小君は空蝉の弟で、源氏から手紙を送る使い走りをさせられる。
  • 軒端萩
    空蝉の義理の娘。明かりの落ちた部屋で空蝉と間違われ源氏と関係を持つ。
  • 夕顔
    源氏とは素性を隠して密会していたが、ある夜、物の怪に取り憑かれて急死。のちに頭の中将の愛人だったことが判明。その遺児が玉鬘。
  • 紫の上
    若紫とも。藤壺の兄の式部卿の娘。葵の上亡き後、正室ではないが、源氏の妻たちの中では、最も寵愛される。源氏との間に子はできなかったが、源氏と明石の上との間にできた明石の姫君を養育する。
  • 朧月夜
    右大臣の姫君で、弘徽殿女御の妹。朱雀帝に入内前に密会し、それが露見し、源氏は須磨へ配流。その後、朱雀帝に寵愛されるも、出家直前まで源氏との関係は続く。
  • 六条御息所
    先の東宮妃。教養高く優雅な貴婦人で、夫の東宮が亡くなった後に源氏と恋愛関係になったが、源氏の心離れへの恨みから、生霊となって女君たちに祟る。その後、娘の斎宮とともに伊勢に下向。再上京後に病死。 娘はのちの秋好中宮。
  • 花散里
    桐壺帝の妃・麗景殿の女御の妹。容貌はさほど美しくはないが、慎ましやかで、世話好きな女性。生涯にわたって源氏と良好な関係を築き、厚い信頼を受ける。
  • 末摘花
    常陸宮という貴族の娘ながら、父親を亡くして困窮。容貌は不美人であり、鼻が赤いからついた名が末摘花(紅花)。純粋な心の持ち主で、不憫に思った源氏は、面倒を見ようと決意する。
  • 源典侍
    桐壺帝に仕える高齢の女官。50代半ばながら、好色で源氏を誘惑する。情事の現場を頭の中将に見つかって嚇される。夫は修理大夫。
  • 明石の上
    明石の入道の娘。須磨に流浪中の源氏と結ばれ、姫を産む。のちに上京、余生は六条院で過ごす。
  • 朝顔の姫君
    桃園式部卿宮の娘であり、斎院。源氏に求婚されたが拒み通した。
  • 女三宮
    朱雀院の皇女で、朱雀院の強い要請を受け源氏の二番目の正室となる。薫の母。頭の中将の長男・柏木に迫られ、拒めずに関係を持ち薫を出産。その後、罪の意識に堪えられず出家。
光源氏の子女
  • 冷泉帝
    表向きは桐壺帝の第十皇子であるが、実際には光源氏と藤壺中宮の間にできた男子。朱雀帝の譲位後に即位。後に出生の秘密を知り、帝位を源氏に譲ろうとするが断られ、准太政天皇に昇進させる。
  • 夕霧
    実質的な長男(実際の長男は冷泉帝)で、母は葵の上。真面目で恋愛下手で、雲居の雁と妾の藤典侍しか妻がいなかったが、柏木の死後、未亡人の落葉の宮に惹かれ、妻とする。
  • 明石中宮
    源氏の長女で、母は明石の上。紫の上に引き取られて養育され、東宮妃として入内し、四男一女を出産する。匂宮の母。 夫の東宮が天皇として即位し、中宮となる。

  • 表向きは源氏と女三の宮の次男であるが、実父は柏木。生まれつき体からよい香りを放っており、「薫の君」と呼ばれる。自身の出生の秘密に悩み、宇治八の宮を訪れ、娘の大君に恋をする。後に大君によく似た浮舟にも惹かれるが、恋は成就しない。
左大臣家(藤原氏)
  • 頭中将
    左大臣と大宮の子。葵の上の同母兄。源氏の親友で、のちに内大臣、太政大臣となる。冷泉帝の退位を機に、自身も政事を退き隠居。夕顔との間に娘(玉鬘)をもうけたが、長らく生き別れとなっていた。
  • 左大臣
    葵の上と頭中将の父。藤原左大臣家の統領。桐壺帝や源氏とは公私共に親しい。若き日の源氏の後見人で、源氏の舅。冷泉帝即位時には源氏の要請を受け太政大臣に就いた。
  • 大宮
    桐壺帝の同母姉妹で左大臣の正室。葵の上、頭中将の母。 葵の上亡き後は、その息子(夕霧)を育て、後に頭中将の娘(雲居の雁)も引き取って育てる。
  • 右大臣の四の君
    頭中将の正室。若い頃は夫と疎遠であった。朧月夜の姉。柏木、紅梅、弘徽殿女御の母。
  • 柏木
    頭中将の長男。従兄弟の夕霧とは親友。源氏の二人目の正妻・女三宮に恋し、源氏の留守中に強引に契った。三宮の懐妊がきっかけで、源氏に不義が知られてしまい、苦悩の内に若くして世を去る。
  • 紅梅
    頭中将の次男、柏木の弟。
  • 弘徽殿女御
    頭中将の娘。冷泉帝の最初の妃となり、帝とは年も近く寵愛されていたが、源氏の後見を受けた秋好中宮には及ばず、中宮の座を得られなかった。
  • 雲居の雁
    頭中将の娘。夕霧の正室。夕霧とは幼馴染で、二人とも大宮に育てられた。後年は夕霧の心移りに悩む日々を過ごす。
  • 玉蔓
    頭中将と夕顔の娘。類いまれな美貌で、乳母一家と大宰府で暮らしていたが、大夫監の強引な求婚から逃げるように帰京し、源氏の養女となる。宮中の人気を独占し、源氏も玉鬘を恋慕するが、髭黒大将が強引に結婚する。
  • 近江の君
    頭中将の落胤。源氏が美しい玉鬘を引き取ったことを羨み、探し出してきた娘。早口で教養がない。
  • 五節の君
    近江君の女房。
右大臣家(藤原氏)
  • 弘徽殿女御(大后)
    右大臣の娘。桐壺帝のもとに入内。第一皇子(朱雀帝)を産む。帝の寵愛を一身に受ける桐壺の更衣を憎んで迫害し、その子源氏にも終生敵対する。
  • 右大臣
    弘徽殿女御、朧月夜らの父。一時は源氏を朧月夜の婿に迎えようともしていたが、政敵となる。弘徽殿女御とともに、源氏を須磨に追放するよう画策した。
その他
  • 秋好中宮
    前東宮(桐壺帝の弟)の姫君。母は六条御息所。母に死別して孤立無援となった彼女を、光源氏が養女として冷泉帝に入内させ、中宮となる。源氏に「春と秋どちらが好きか」と問われて、「母の亡くなった秋を特別に思う」と答えたことから、秋好中宮と呼ばれている。
  • 浮舟
    桐壺帝八の宮の庶出の娘。 「宇治十帖」の主要人物。薫と匂宮に思われ、悩み抜き入水自殺を図る。助かると即、出家。光源氏と直接の関わりはない。
  • 大君
    宇治八の宮の長女。思慮深くプライドの高い女性であり、薫の求愛を拒み続ける。
  • 惟光
    藤原惟光。源氏の乳兄弟であり、源氏が最も信頼している家来。
  • 匂宮
    今上帝と秋好中宮の御子。六条院で一緒に育った薫にライバル心を抱いている。
   

各帖のあらすじ 本文・現代語訳へ

【PR】

古典に親しむ

万葉集・竹取物語・枕草子などの原文と現代語訳。

バナースペース

【PR】

「源氏物語」について

11世紀初めに紫式部が著した物語で、平安時代の女流文学の代表作。書名は作者が命名したのではなく、『紫式部日記』や『更級日記』などに見える『源氏の物語』が本来の呼び方であったといわれる。一般的に全編54帖(じょう)を3部にわけ、光源氏の栄華への軌跡を第1部、その憂愁の晩年を第2部、次世代の薫や匂宮(におうのみや)の物語を第3部とする。第3部最後の10帖は、宇治を舞台に展開することから「宇治十帖」とよばれる。

400字詰め原稿用紙にすると約2400枚に及ぶ長さがあり、500名近くの人物が登場する。時代も70年余りにわたっており、また800首弱の和歌を含んだ歌物語としてもみることができる。

ただし紫式部が書いた原本は残っておらず、現在伝わる最古の写本も鎌倉時代のものである。また紫式部が執筆したことは間違いないとされるが、作者複数説も古くからあるなど、諸説あって解明されていない点も多い。

全編は、『竹取物語』『宇津保物語』などの伝奇物語、歌物語の『伊勢物語』、『古今集』『後撰集』、あるいは中国渡来の『白氏文集』『史記』などの影響を受けながら、独自の世界を開き、『蜻蛉(かげろう)日記』から生まれた古歌を引用する引歌(ひきうた)の技法も随所に見られ、対話や心内語を駆使して内面を巧みに掘り下げる描写がなされている。現在、漢詩文や浄土教思想からの影響について、多くの研究がなされているが、ほかに民俗学や文化人類学をはじめ隣接した諸分野の成果をとりいれた多角的な研究も盛んである。

『更級日記』の作者・菅原孝標(たかすえ)の女(むすめ)が日夜愛読したことが示すように、『源氏物語』は成立直後から人気を博し、のちの物語・絵画・能などにも大きな影響をあたえた。物語では、平安末期の『夜の寝覚』『狭衣(さごろも)物語』や、江戸時代の『好色一代男』(井原西鶴)にもその影響がみられる。絵画では、現存最古の源氏物語絵巻が平安末の作とされ、以後「源氏絵」として様式化された図柄は、調度や服飾などに多く用いられた。また、和歌の規範としての研究から、多くの注釈書が生まれ、なかでも江戸時代の国学者本居宣長が『源氏物語玉の小櫛(おぐし)』で、「もののあはれ」と評したのは有名。

全体のあらすじ

家柄も身分もそれほど高くなかった一人の更衣(こうい)が、帝に愛され玉のような男子(光源氏)を生むが、周囲に嫉妬されて亡くなった。臣籍に降下した光源氏は、美貌と才能に恵まれ、多くの女性と交渉を持ち、しだいに栄華の道を歩む。光源氏出生を記す巻一「桐壷」から39歳で栄華の頂点に達する巻三十三「藤裏葉(ふじのうらば)」までを第一部、これをさらに紫上(むらさきのうえ)を中心とする物語、玉蔓(たまかずら)中心の物語の甲、乙に分ける考え方もある。

第二部は、光源氏40歳以降の凋落期へ話が進む。理想の女性紫上との水も漏らさぬ間柄も、先帝朱雀院に末娘女三宮(おんなさんのみや)の後事を託されることによって、しだいに亀裂が生じてくる。光源氏の正妻となった女三宮はやがて、前から自分にあこがれていた柏木と通じてしまう。これを知った光源氏は、若いころ自分が父の思い人藤壺と契ったことを思い起こし、罪の報いに身震いする。

光源氏に皮肉な言葉を浴びせられた柏木は病死し、女三宮は男子を出産するが、ほどなく出家してしまう。光源氏は我が子ならぬ子を抱くが、愛情が湧いてこなかった。やがて病気がちだった最愛の紫上も死に、落莫の思いに閉ざされた光源氏は出家の用意をする。以上が巻三十四「若葉上」から巻四十一「幻」までの8帖で、このあと巻名のみ伝えられる「雲隠」の巻で光源氏の死が暗示される。

第三部の巻四十五「橋姫」から最終帖「夢浮橋」はいわゆる「宇治十帖」である。光源氏亡きあと、女三宮の子薫は、仏道と恋愛のいずれにも没頭できない優柔不断な面がある一方、篤実な魂を持つ男として描かれる。「夢浮橋」は「男女の仲」というほどの意であり、さまざまな男女関係を記し、その深さ、重さ、人間存在の深淵にまでたどりつく『源氏物語』の終章にふさわしいタイトルとなっている。

【PR】

本文・現代語訳へ
各帖のあらすじ