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万葉集
巻第12(索引)<
万葉集(掲載歌の索引)
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古典に親しむ
『万葉集』巻第12(索引)
我が背子が朝けの形能く見ずて今日の間を恋ひ暮らすかも
我が心ともしみ思ふ新た夜の一夜もおちず夢に見えこそ
愛しと我が念ふ妹を人みなの行く如見めや手にまかずして
このころの寐の寝らえぬは敷栲の手枕まきて寝まく欲りこそ
忘るやと物語りして心遣り過ぐせど過ぎずなほ恋ひにけり
夜も寝ず安くもあらず白栲の衣は脱かじ直に逢ふまでに
後も逢はむ我にな恋ひそと妹は言へど恋ふる間に年は経につつ
直に逢はずあるは諾なり夢にだに何しか人の言の繁けむ
ぬばたまのその夢にだに見え継ぐや袖干る日なく我れは恋ふるを
うつつには直には逢はず夢にだに逢ふと見えこそ我が恋ふらくに
人の見る上は結びて人の見ぬ下紐開けて恋ふる日ぞ多き
人言の繁き時には我妹子し衣なりせば下に着ましを
真玉つく遠をし兼ねて思へこそ一重の衣ひとり着て寝れ
白栲の我が紐の緒の絶えぬ間に恋結びせむ逢はむ日までに
新墾の今作る道さやかにも聞きてけるかも妹が上のことを
山背の石田の社に心鈍く手向けしたれや妹に逢ひかたき
菅の根のねもころごろに照る日にも干めや我が袖妹に逢はずして
妹に恋ひ寐寝ぬ朝に吹く風は妹にし触れば我れさへに触れ
明日香川高川避かし越え来しをまこと今夜は明けずも行かぬか
八釣川水底絶えず行く水の継ぎてぞ恋ふるこの年ころを
礒の上に生ふる小松の名を惜しみ人に知らえず恋ひわたるかも
山河の水陰に生ふる山菅の止まずも妹が思ほゆるかも
浅葉野に立ち神さぶる菅の根のねもころ誰がゆゑ我が恋ひざらむ
我が背子を今か今かと待ち居るに夜の更けゆけば嘆きつるかも
玉釧まき寝る妹もあらばこそ夜の長けくも嬉しかるべき
人妻に言ふは誰が言さ衣のこの紐解けと言ふは誰が言
かくばかり恋ひむものぞと知らませばその夜はゆたにあらましものを
恋ひつつも後も逢はむと思へこそ己が命を長く欲りすれ
今は我は死なむよ我妹逢はずして思ひわたれば安けくもなし
我が背子が来むと語りし夜は過ぎぬしゑやさらさらしこり来めやも
人言の讒しを聞きて玉桙の道にも逢はじと言へりし我妹
逢はなくも憂しと思へばいや増しに人言繁く聞こえ来るかも
里人も語り継ぐがねよしゑやし恋ひても死なむ誰が名ならめや
確かなる使ひをなみと心をぞ使ひに遣りし夢に見えきや
天地に少し至らぬ大夫と思ひし我れや雄心もなき
里近く家や居るべきこの我が目の人目をしつつ恋の繁けく
何時はなも恋ひずありとはあらねどもうたてこのころ恋し繁しも
ぬばたまの寐ねてし宵の物思ひに裂けにし胸はやむ時もなし
み空行く名の惜しけくも我)れはなし逢はぬ日まねく年の経ぬれば
うつつにも今も見てしか夢のみに手本まき寝と見るは苦しも
立ちて居てすべのたどきも今はなし妹に逢はずて月の経ゆけば
逢はずして恋ひわたるとも忘れめやいや日に異には思ひ増すとも
外目にも君が姿を見てばこそ我が恋やまめ命死なずは
恋ひつつも今日はあらめど玉櫛笥明けなむ明日をいかに暮らさむ
さ夜更けて妹を思ひ出で敷たへの枕もそよに嘆きつるかも
人言はまこと言痛くなりぬともそこに障らむ我れにあらなくに
立ちて居てたどきも知らず我が心天つ空なり地は踏めども
世の中の人のことばと思ほすなまことぞ恋ひし逢はぬ日を多み
いでなぞ吾がここだく恋ふる我妹子が逢はじと言へることもあらなくに
ぬばたまの夜を長みかも我が背子が夢に夢にし見え還るらむ
あらたまの年の緒長くかく恋ひばまこと我が命全からめやも
思ひ遣るすべのたどきも我れは無し逢はずてまねく月の経ぬれば
朝去きて夕は来ます君ゆゑにゆゆしくも吾は歎きつるかも
聞きしより物を思へば我が胸は破れて砕けて利心もなし
人言を繁み言痛み我妹子に去にし月よりいまだ逢はぬかも
うたがたも言ひつつもあるか我れならば地には落ちず空に消なまし
いかならむ日の時にかも我妹子が裳引きの姿朝に日に見む
ひとり居て恋ふるは苦し玉たすき懸けず忘れむ事計りもが
なかなかに黙もあらましをあづきなく相見そめても我れは恋ふるか
我妹子が笑まひ眉引き面影にかかりてもとな思ほゆるかも
あかねさす日の暮れぬればすべをなみ千たび嘆きて恋ひつつぞ居る
吾が恋は夜昼別かず百重なす心し思へばいたもすべなし
いとのきて薄き眉根をいたづらに掻かしめつつも逢はぬ人かも
恋ひ恋ひて後も逢はむと慰もる心し無くは生きてあらめやも
いくばくも生けらじ命を恋ひつつぞ我れは息づく人に知らえず
他国に結婚に行きて大刀が緒もいまだ解かねばさ夜ぞ明けにける
大夫の聡き心も今は無し恋の奴に我れは死ぬべし
常かくし恋ふれば苦ししましくも心休めむ事計りせよ
おほろかに我れし思はば人妻にありといふ妹に恋ひつつあらめや
心には千重に百重に思へれど人目を多み妹に逢はぬかも
人目多み目こそ忍ぶれ少なくも心のうちに我が思はなくに
人の見て言とがめせぬ夢に我れ今夜至らむ宿閉すなゆめ
いつまでに生かむ命ぞおほかたは恋ひつつあらずは死ぬるまされり
愛しと思ふ我妹を夢に見て起きて探るに無きが寂しさ
妹と言はば無礼し畏ししかすがに懸けまく欲しき言にあるかも
玉勝間逢はむといふは誰なるか逢へる時さへ面隠しする
うつつにか妹が来ませる夢にかも我れか惑へる恋の繁きに
おほかたは何かも恋ひむ言挙げせず妹に寄り寝む年は近きを
ふたりして結びし紐をひとりして我れは解き見じ直に逢ふまでは
死なむ命此は思はずただしくも妹に逢はざる事をしぞ思ふ
幼婦は同じ情にしましくも止む時も無く見むとぞ思ふ
夕さらば君に逢はむと思へこそ日の暮るらくも嬉しかりけれ
ただ今日も君には逢はめど人言を繁み逢はずて恋ひわたるかも
世の中に恋繁けむと思はねば君が手本をまかぬ夜もありき
みどり子のためこそ乳母は求むと言へ乳飲めや君が乳母求むらむ
悔しくも老いにけるかも我が背子が求むる乳母に行かましものを
うらぶれて離れにし袖をまたまかば過ぎにし恋い乱れ来むかも
おのがじし人死にすらし妹に恋ひ日に異に痩せぬ人に知らえず
宵々に我が立ち待つにけだしくも君来まさずは苦しかるべし
生ける世に恋といふものを相見ねば恋のうちにも我れぞ苦しき
思ひつつ居れば苦しもぬばたまの夜に至らば我れこそ行かめ
心には燃えて思へどうつせみの人目を繁み妹に逢はぬかも
相思はず君はいませど片恋に我れはぞ恋ふる君が姿に
あぢさはふ目は飽かざらね携り言問はなくも苦しかりけり
あらたまの年の緒長くいつまでか我が恋ひ居らむ命知らずて
今は吾は死なむよ我が背恋すれば一夜一日も安けくもなし
白栲の袖折り返し恋ふればか妹が姿の夢にし見ゆる
人言を繁み言痛み我が背子を目には見れども逢ふよしもなし
恋ふと言へば薄きことなり然れども我れは忘れじ恋ひは死ぬとも
なかなかに死なば安けむ出づる日の入る別知らぬ我れし苦しも
思ひ遣るたどきも我れは今は無し妹に逢はずて年の経ぬれば
我が背子に恋ふとにしあらしみどり子の夜泣きをしつつ寐ねかてなくは
我が命し長く欲しけく偽りをよくする人を捕ふばかりを
人言を繁みと妹に逢はずして心のうちに恋ふるこのころ
玉梓の君が使を待ちし夜の名残ぞ今も寐ねぬ夜の多き
玉桙の道に行き逢ひて外目にも見ればよき子をいつとか待たむ
思ふにし余りにしかば術を無み我は言ひてき忌むべきものを
明日の日はその門行かむ出でて見よ恋ひたる姿あまた著けむ
うたて異に心いぶせし事計りよくせ我が背子逢へる時だに
我妹子が夜戸出の姿見てしより心空なり地は踏めども
海石榴市の八十の衢に立ち平し結びし紐を解かまく惜しも
吾が齢し衰へぬれば白細布の袖のなれにし君をしぞ思ふ
君に恋ひ我が泣く涙白栲の袖さへ漬ちてせむすべもなし
今よりは逢はじとすれや白栲の我が衣手の干る時もなき
夢かと心惑ひぬ月まねく離れにし君が言の通へば
あらたまの年月兼ねてぬばたまの夢に見えけり君が姿は
今よりは恋ふとも妹に逢はめやも床の辺去らず夢に見えこそ
人の見て言とがめせぬ夢にだに止まず見えこそ我が恋止まむ
うつつには言も絶えたり夢にだに継ぎて見えこそ直に逢ふまでに
うつせみの現し心も我れは無し妹を相見ずて年の経ぬれば
現身の常の辞と思へども継ぎてし聞けば心惑ひぬ
白栲の袖離れて寝るぬばたまの今夜は早も明けば明けなむ
白栲の手本ゆたけく人の寝る味寐は寝ずや恋ひわたりなむ
かくのみにありける君を衣にあらば下にも着むと我が思へりける
橡の袷の衣裏にせば我れ強ひめやも君が来まさぬ
紅の薄染め衣浅らかに相見し人に恋ふるころかも
年の経ば見つつ偲へと妹が言ひし衣の縫目見れば悲しも
橡の一重の衣裏もなくあるらむ子ゆゑ恋ひわたるかも
解き衣の思ひ乱れて恋ふれども何のゆゑぞと問ふ人もなし
桃花染めの浅らの衣浅らかに思ひて妹に逢はむものかも
大君の塩焼く海人の藤衣なれはすれどもいやめづらしも
赤絹の純裏の衣長く欲り我が思ふ君が見えぬころかも
真玉つくをちこち兼ねて結びつる我が下紐の解くる日あらめや
紫の帯の結びも解きもみずもとなや妹に恋ひわたりなむ
高麗錦紐の結びも解き放けず斎ひて待てど験なきかも
紫の我が下紐の色に出でず恋ひかも痩せむ逢ふよしを無み
何ゆゑか思はずあらむ紐の緒の心に入りて恋しきものを
まそ鏡見ませ我が背子我が形見持てらむ時に逢はざらめやも
まそ鏡直目に君を見てばこそ命に向ふ我が恋やまめ
まそ鏡見飽かぬ妹に逢はずして月の経ゆけば生けりともなし
祝部らが斎ふ三諸のまそ鏡懸けて偲ひつ逢ふ人ごとに
針はあれど妹し無ければ付けめやと我れを悩まし絶ゆる紐の緒
高麗剣我が心から外のみに見つつや君を恋ひわたりなむ
剣大刀名の惜しけくも我れはなしこのころの間の恋の繁きに
梓弓末はし知らず然れどもまさかは吾に寄りにしものを
梓弓引きみ緩へみ思ひみてすでに心は寄りにしものを
梓弓引きて緩へぬ大夫や恋といふものを忍びかねてむ
梓弓末の中ごろ淀めりし君には逢ひぬ嘆きは止まむ
今さらに何をか思はむ梓弓引きみ緩へみ寄りにしものを
娘子らが績み麻のたたり打ち麻懸け績む時なしに恋ひわたるかも
たらちねの母が養ふ蚕の繭隠りいぶせくもあるか妹に逢はずして
玉たすき懸けねば苦し懸けたれば継ぎて見まくの欲しき君かも
紫のまだらの縵花やかに今日見し人に後恋ひむかも
玉縵懸けぬ時なく恋ふれども何しか妹に逢ふ時もなき
逢ふよしの出で来るまでは畳薦重ね編む数夢にし見えむ
白香つく木綿は花物言こそは何時のまさかも常忘らえね
石上布留の高橋高々に妹が待つらむ夜ぞ更けにける
湊入りの葦別け小舟障り多み今来む我れを淀むと思ふな
水を多み上田に種蒔き稗を多み選らえし業ぞ我がひとり寝る
魂合へば相寝るものを小山田の鹿猪田守るごと母し守らすも
春日野に照れる夕日の外のみに君を相見て今ぞ悔しき
あしひきの山より出づる月待つと人には言ひて妹待つ吾を
夕月夜暁闇のおほほしく見し人ゆゑに恋ひ渡るかも
ひさかたの天つみ空に照る月の失せむ日にこそ吾が恋止まめ
十五日に出でにし月の高々に君を坐せて何をか思はむ
月夜よみ門に出で立ち足占して行く時さへや妹に逢はざらむ
ぬばたまの夜渡る月の清けくはよく見てましを君が姿を
あしひきの山を木高み夕月をいつかと君を待つが苦しさ
橡の衣解き洗ひ真土山本つ人にはなほ及かずけり
佐保川の川波立たず静けくも君にたぐひて明日さへもがも
我妹子に衣春日の宜寸川よしもあらぬか妹が目を見む
との曇り雨布留川のさざれ波間なくも君は思ほゆるかも
我妹子や我を忘らすな石上袖布留川の絶えむと思へや
三輪山の山下響み行く水の水脈し絶えずは後も我が妻
雷のごと聞こゆる滝の白波の面知る君が見えぬこのころ
山川の滝にまされる恋すとぞ人知りにける間無くし思へば
あしひきの山川水の音に出でず人の子ゆゑに恋ひ渡るかも
高瀬なる能登瀬の川の後も逢はむ妹には我れは今にあらずとも
洗ひ衣取替川の川淀の淀まむ心思ひかねつも
斑鳩の因可の池の宣しくも君を言はねば思ひぞ我がする
隠り沼の下ゆは恋ひむいちしろく人の知るべく嘆きせめやも
行く方無み隠れる小沼の下思ひに我れぞ物思ふこのころの間
隠り沼の下ゆ恋ひあまり白波のいちしろく出でぬ人の知るべく
妹が目を見まく堀江のさざれ波しきて恋ひつつありと告げこそ
石走る垂水の水のはしきやし君に恋ふらく吾が心から
君は来ず吾は故無み立つ波のしくしくわびしかくて来じとや
近江の海辺は人知る沖つ波君をおきては知る人も無し
大海の底を深めて結びてし妹が心は疑ひもなし
貞の浦に寄する白波間無く思ふを何か妹に逢ひかたき
思ひ出でてすべ無き時は天雲の奥処も知らず恋ひつつぞ居る
天雲のたゆたひやすき心あらば吾をな頼めそ待たば苦しも
君があたり見つつも居らむ生駒山雲なたなびき雨は降るとも
なかなかに何か知りけむ我が山に燃ゆる煙の外に見ましを
吾妹子に恋ひすべ無かり胸を熱み朝戸開くれば見ゆる霧かも
暁の朝霧隠りかへらばに何しか恋の色に出でにける
思ひ出づる時はすべなみ佐保山に立つ雨霧の消ぬべく思ほゆ
殺目山行きかふ道の朝霞ほのかにだにや妹に逢はざらむ
かく恋ひむものと知りせば夕置きて朝は消ぬる露ならましを
夕置きて朝は消ぬる白露の消ぬべき恋も吾はするかも
後つひに妹に逢はむと朝露の命は生けり恋は繁けど
朝な朝な草の上白く置く露の消なば共にと言ひし君はも
朝日さす春日の小野に置く露の消ぬべき吾が身惜しけくもなし
露霜の消やすき我が身老いぬともまたをちかへり君をし待たむ
君待つと庭のみ居ればうち靡く我が黒髪に霜ぞ置きにける
朝霜の消ぬべくのみや時なしに思ひわたらむ息の緒にして
ささ波の波越す安蹔に降る小雨間も置きて我が思はなくに
神さびて巌に生ふる松が根の君が心は忘れかねつも
み狩りする雁羽の小野の櫟柴の馴れはまさらず恋こそまされ
桜麻の麻生の下草早く生ひば妹が下紐解かざらましを
春日野に浅茅標結ひ絶えめやと我が思ふ人はいや遠長に
あしひきの山菅の根のねもころに我れはぞ恋ふる君が姿に
かきつはた佐紀沢に生ふる菅の根の絶ゆとや君が見えぬこのころ
あしひきの山菅の根のねもころに止まず思はば妹に逢はむかも
相思はずあるものをかも菅の根のねもころごろに我が思へるらむ
山菅の止まずて君を思へかも我が心どのこの頃は無き
妹が門行き過ぎかねて草結ぶ風吹き解くなまたかへり見む
浅茅原茅生に足踏み心ぐみ我が思ふ児らが家のあたり見つ
うちひさす宮にはあれど月草のうつろふ心我が思はなくに
百に千に人は言ふとも月草のうつろふ心我れ持ためやも
忘れ草我が紐に付く時と無く思ひ渡れば生けりともなし
暁の目覚まし草とこれをだに見つついまして吾と偲はせ
忘れ草垣もしみみに植ゑたれど醜の醜草なほ恋ひにけり
浅茅原小野に標結ふ空言も逢はむと聞こせ恋のなぐさに
人皆の笠に縫ふといふ有間菅ありて後にも逢はむとぞ思ふ
み吉野の秋津の小野に刈る草の思ひ乱れて寝る夜しぞ多き
妹待つと御笠の山の山菅の止まずや恋ひむ命死なずは
谷狭み嶺辺に延へる玉葛延へてしあらば年に来ずとも
水茎の岡の葛葉を吹きかへし面知る子らが見えぬころかも
赤駒のい行きはばかる真葛原何の伝言直にし良けむ
木綿畳田上山のさな葛ありさりてしも今ならずとも
丹波道の大江の山の真玉葛絶えむの心我が思はなくに
大崎の荒礒の渡り延ふ葛の行く方も無くや恋ひ渡りなむ
木綿包み白月山のさな葛後もかならず逢はむとそ思ふ
はねず色のうつろひやすき心あれば年をぞ来経る言は絶えずて
かくしてぞ人は死ぬといふ藤波のただ一目のみ見し人ゆゑに
住吉の敷津の浦のなのりその名は告りてしを逢はなくも怪し
みさご居る荒礒に生ふるなのりそのよし名は告らじ親は知るとも
波の共靡く玉藻の片思に我が思ふ人の言の繁けく
わたつみの沖つ玉藻の靡き寝む早来ませ君待たば苦しも
わたつみの沖に生ひたる縄海苔の名はかつて告らじ恋ひは死ぬとも
玉の緒を片緒に縒りて緒を弱み乱るる時に恋ひざらめやも
君に逢はず久しくなりぬ玉の緒の長き命の惜しけくもなし
恋ふること増される今は玉の緒の絶えて乱れて死ぬべく思ほゆ
海人娘子潜き採るといふ忘れ貝 世にも忘れじ妹が姿は
朝影に我が身はなりぬ玉かぎるほのかに見えて去にし子ゆゑに
なかなかに人とあらずは桑子にも成ならましものを玉の緒ばかり
真菅よし宗我の川原に鳴く千鳥間無し我が背子我が恋ふらくは
恋衣着奈良の山に鳴く鳥の間無く時無し我が恋ふらくは
遠つ人猟道の池に住む鳥の立ちても居ても君をしぞ思ふ
葦辺行く鴨の羽音の音のみに聞きつつもとな恋ひ渡るかも
鴨すらもおのが妻どちあさりして後るる間に恋ふといふものを
白真弓斐太の細江の菅鳥の妹に恋ふれか寐を寝かねつる
小竹の上に来居て鳴く鳥目を安み人妻ゆゑに我れ恋ひにけり
物思ふと寐寝ねず起きたる朝明にはわびて鳴くなり庭つ鳥さへ
朝烏早くな鳴きそわが背子が朝明の姿見れば悲しも
馬柵越しに麦食む駒の罵らゆれど猶し恋しく思ひかねつも
さ桧隈桧隈川に馬留め馬に水飼へ我れ外に見む
おのれ故罵らえて居れば青馬の面高夫駄に乗りて来べしや
紫草を草と別く別く伏す鹿の野は異にして心は同じ
思はぬを思ふと言はば真鳥住む雲梯の社の神し知らさむ
紫は灰さすものぞ海石榴市の八十の衢に逢へる子や誰れ
たらちねの母が呼ぶ名を申さめど道行く人を誰れと知りてか
逢はなくは然もありなむ玉梓の使をだにも待ちやかねてむ
逢はむとは千度思へどあり通ふ人目を多み恋つつぞ居る
人目多み直に逢はずてけだしくも我が恋ひ死なば誰が名ならむも
相見まく欲しきがためは君よりも我れぞまさりていふかしみする
うつせみの人目を繁み逢はずして年の経ぬれば生けりともなし
うつせみの人目繁くはぬばたまの夜の夢にを継ぎて見えこそ
ねもころに思ふ我妹を人言の繁きによりて淀む頃かも
人言の繁くしあらば君も我れも絶えむと言ひて逢ひしものかも
すべもなき片恋をすとこのころに我が死ぬべきは夢に見えきや
夢に見て衣を取り着装ふ間に妹が使ひそ先立ちにける
ありありて後も逢はむと言のみを堅く言ひつつ逢ふとはなしに
極まりて我れも逢はむと思へども人の言こそ繁き君にあれ
息の緒に我が息づきし妹すらを人妻なりと聞けば悲しも
我が故にいたくなわびそ後つひに逢はじと言ひしこともあらなくに
門立てて戸も閉したるを何処ゆか妹が入り来て夢に見えつる
門立てて戸は閉したれど盗人の穿れる穴より入りて見えけむ
明日よりは恋ひつつ行かむ今夜だに早く宵より紐解け我妹
今さらに寝めや我が背子新夜の一夜もおちず夢に見えこそ
我が背子が使を待つと笠も着ず出でつつぞ見し雨の降らくに
心なき雨にもあるか人目守り乏しき妹に今日だに逢はむを
ただひとり寝れど寝かねて白栲の袖を笠に着濡れつつぞ来し
雨も降り夜も更けにけり今さらに君去なめやも紐解き設けな
ひさかたの雨の降る日を我が門に蓑笠着ずて来る人や誰れ
巻向の穴師の山に雲居つつ雨は降れども濡れつつぞ来し
度会の大川の辺の若久木我が久ならば妹恋ひむかも
我妹子を夢に見え来と大和道の渡り瀬ごとに手向けぞ我がする
桜花咲きかも散ると見るまでに誰れかも此所に見えて散り行く
豊国の企救の浜松ねもころに何しか妹に相言ひそめけむ
月変へて君をば見むと思へかも日も変へずして恋の繁けく
な行きそと帰りも来やと顧みに行けど帰らず道の長手を
旅にして妹を思ひ出でいちしろく人の知るべく嘆きせむかも
里離り遠からなくに草枕旅とし思へばなほ恋ひにけり
近くあれば名のみも聞きて慰めつ今夜ゆ恋のいや増さりなむ
旅にありて恋ふれば苦しいつしかも都に行きて君が目を見む
遠くあれば姿は見えず常のごと妹が笑まひは面影にして
年も経ず帰り来なむと朝影に待つらむ妹し面影に見ゆ
玉桙の道に出で立ち別れ来し日より思ふに忘る時なし
はしきやし然ある恋にもありしかも君に後れて恋しき思へば
草枕旅の悲しくあるなへに妹を相見て後恋ひむかも
国遠み直には逢はず夢にだに我れに見えこそ逢はむ日までに
かく恋ひむものと知りせば我妹子に言問はましを今し悔しも
旅の夜の久しくなればさ丹つらふ紐解き放けず恋ふるこのころ
我妹子し我を偲ふらし草枕旅の丸寝に下紐解けぬ
草枕旅の衣の紐解けて思ほゆるかもこの年ころは
草枕旅の紐解く家の妹し我を待ちかねて嘆かふらしも
玉釧巻き寝し妹を月も経ず置きてや越えむこの山の崎
梓弓末は知らねど愛しみ君にたぐひて山道越え来ぬ
霞立つ春の長日を奥処なく知らぬ山道を恋ひつつか来む
外のみに君を相見て木綿畳手向けの山を明日か越え去なむ
玉勝間安倍島山の夕露に旅寝えせめや長きこの夜を
み雪降る越の大山行き過ぎていづれの日にか我が里を見む
いで我が駒早く行きこそ真土山待つらむ妹を行きて早見む
悪木山木末ことごと明日よりは靡きてありこそ妹があたり見む
鈴鹿川八十瀬渡りて誰がゆゑか夜越えに越えむ妻もあらなくに
我妹子にまたも近江の安の川安寐も寝ずに恋ひわたるかも
旅にありて物をぞ思ふ白波の辺にも沖にも寄るとはなしに
港廻に満ち来る潮のいや増しに恋はまされど忘らえぬかも
沖つ波辺波の来寄る佐太の浦のこのさだ過ぎて後恋ひむかも
在千潟あり慰めて行かめども家なる妹いおほほしみせめ
みをつくし心尽くして思へかもここにももとな夢にし見ゆる
我妹子に触るとはなしに荒礒廻に我が衣手は濡れにけるかも
室の浦の瀬戸の崎なる鳴島の磯越す波に濡れにけるかも
霍公鳥飛幡の浦にしく波のしくしく君を見むよしもがも
我妹子を外のみや見む越の海の子難の海の島ならなくに
波の間ゆ雲居に見ゆる粟島の逢はぬものゆゑ我に寄そる子ら
衣手の真若の浦の真砂地間なく時なし我が恋ふらくは
能登の海に釣りする海人の漁り火の光りにい行く月待ちがてり
志賀の海人の釣りし燭せる漁り火のほのかに妹を見むよしもがも
難波潟漕ぎ出る舟のはろはろに別れ来ぬれど忘れかねつも
浦廻漕ぐ熊野舟着きめづらしく懸けて思はぬ月も日もなし
松浦舟騒く堀江の水脈早み楫取る間なく思ほゆるかも
漁りする海人の楫の音ゆくらかに妹は心に乗りにけるかも
若の浦に袖さへ濡れて忘貝拾へど妹は忘らえなくに
草枕旅にし居れば刈り薦の乱れて妹に恋ひぬ日はなし
志賀の海人の礒に刈り干す名告藻の名は告りてしを何か逢ひかたき
国遠み思ひなわびそ風の共雲の行くごと言は通はむ
留まりにし人を思ふに秋津野に居る白雲のやむ時もなし
うらもなく去にし君ゆゑ朝な朝なもとなそ恋ふる逢ふとは無けど
白栲の君が下紐我れさへに今日結びてな逢はむ日のため
白栲の袖の別れは惜しけども思ひ乱れてゆるしつるかも
都辺に君は去にしを誰が解けか我が紐の緒の結ふ手たゆきも
草枕旅行く君を人目多み袖振らずしてあまた悔しも
まそ鏡手に取り持ちて見れど飽かぬ君に後れて生けりともなし
曇り夜のたどきも知らぬ山越えて往ます君をばいつとか待たむ
たたなづく青垣山の隔なりなばしばしば君を言問はじかも
朝霞たなびく山を越えて去なば我れは恋ひむな逢はむ日までに
あしひきの山は百重に隠すとも妹は忘れじ直に逢ふまでに
雲居なる海山越えてい行きなば我れは恋ひむな後は逢ひぬとも
よしゑやし恋ひじとすれど木綿間山越えにし君が思ほゆらくに
草蔭の荒藺の崎の笠島を見つつか君が山道越ゆらむ
玉勝間島熊山の夕暮れにひとりか君が山道越ゆらむ
息の緒に我が思ふ君は鶏が鳴く東の坂を今日か越ゆらむ
磐城山直越え来ませ礒崎の許奴美の浜に我れ立ち待たむ
春日野の浅茅が原に後れ居て時ぞともなし我が恋ふらくは
住吉の岸に向かへる淡路島あはれと君を言はぬ日はなし
明日よりは印南の川の出でて去なば留まれる我れは恋ひつつやあらむ
海の底沖は畏し礒廻より漕ぎ廻み行かせ月は経ぬとも
飼飯の浦に寄する白波しくしくに妹が姿は思ほゆるかも
時つ風吹飯の浜に出で居つつ贖ふ命は妹がためこそ
柔田津に舟乗りせむと聞きしなへ何ぞも君が見え来ざるらむ
みさご居る洲に居る舟の漕ぎ出なばうら恋しけむ後は逢ひぬとも
玉葛幸くいまさね山菅の思ひ乱れて恋ひつつ待たむ
後れ居て恋ひつつあらずは田子の浦の海人ならましを玉藻刈る刈る
筑紫道の荒礒の玉藻刈るとかも君は久しく待てど来まさぬ
あらたまの年の緒長く照る月の飽かざる君や明日別れなむ
久にあらむ君を思ふにひさかたの清き月夜も闇のみに見ゆ
春日なる御笠の山に居る雲を出で見るごとに君をしぞ思ふ
あしひきの片山雉立ち行かむ君に後れてうつしけめやも
玉の緒の現し心や八十楫懸け漕ぎ出む船に後れて居らむ
八十楫懸け島隠りなば我妹子が留まれと振らむ袖見えじかも
十月しぐれの雨に濡れつつか君が行くらむ宿か借るらむ
十月雨間も置かず降りにせばいづれの里の宿か借らまし
白栲の袖の別れを難みして荒津の浜に宿りするかも
草枕旅行く君を荒津まで送りぞ来ぬる飽き足らねこそ
荒津の海我れ幣奉り斎ひてむ早帰りませ面変りせず
朝な朝な筑紫の方を出で見つつ音のみそ我が泣くいたもすべなみ
豊国の企救の長浜行き暮らし日の暮れ行けば妹をしぞ思ふ
豊国の企救の高浜高々に君待つ夜らはさ夜更けにけり
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