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巻第8(索引)万葉集(掲載歌の索引)古典に親しむ

『万葉集』巻第8-1631・1632

訓読

1631
今造る久迩(くに)の都に秋の夜(よ)の長きにひとり寝(ぬ)るが苦(くる)しさ
1632
あしひきの山辺(やまへ)に居(を)りて秋風の日に異(け)に吹けば妹(いも)をしぞ思ふ

意味

〈1631〉
 今新しく造営している久迩の都にいると、秋の夜長にひとり寝ているのは苦しい。
〈1632〉
 こうして山辺に暮らしていて、日増しに秋風が吹いてくると、あなたのことが思われてなりません。

鑑賞

 1631は、大伴家持が、安倍女郎(あへのいらつめ)に贈った歌。安倍女郎は、巻第3-269、巻第4-505、506、514にも作歌がありますが、いずれも万葉第二期の作品であるため、ここの安倍女郎は別人とされます。伝未詳ながら若き日の家持の恋人とみられ、単身赴任の寂しさを訴えています。窪田空穂は、この歌について「こうした訴え方は、相応に関係が久しく、心置きなくというよりも、むしろ甘え気分でいうものと思われる」と言っていますが、二人はどのような関係だったのでしょうか。「久迩の都」の造営は、天平12年12月から同15年12月まで行われました。なお、「今造る久迩の都」と同じ句が、同じ家持による巻第6-1037の歌にもあります。

 
1632は、恭仁京にいる家持が、奈良の家に留まっていた坂上大嬢に贈った歌。「あしひきの」は「山」の枕詞。「山辺に居りて」は、恭仁京は周囲に山が迫っているので、こう言ったもの。「日に異に」は、日増しに。単身赴任の身に日増しに吹きつのる冷たい秋風に、妻恋しさを訴えた歌です。
 


家持の恋人たち

 青春期の家持に相聞歌を贈った、または贈られた女性は次のようになります。

大伴坂上大嬢 ・・・巻第4-581~584、727~755、765~768ほか
笠郎女(笠女郎とも) ・・・巻第3-395~397、巻第4-587~610ほか
山口女王 ・・・巻第4-613~617、巻第8-1617
大神女郎 ・・・巻第4-618、巻第8-1505
中臣女郎 ・・・巻第4-675~679
娘子   ・・・巻第4-691~692
河内百枝娘子 ・・・巻第4-701~702
巫部麻蘇娘子 ・・・巻第4-703~704
日置長枝娘子 ・・・巻第8-1564
妾  ・・・巻第4-462、464~474
娘子 ・・・巻第4-700
童女 ・・・巻第4-705~706
粟田女娘子 ・・・巻第4-707~708
娘子  ・・・巻第4-714~720
紀女郎 ・・・巻第4-762~764、769、775~781ほか
娘子  ・・・巻第4-783
安倍女郎 ・・・巻第8-1631
平群女郎 ・・・巻第17-3931~3942

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古典に親しむ

万葉集・竹取物語・枕草子などの原文と現代語訳。