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巻第10(索引)万葉集(掲載歌の索引)古典に親しむ

『万葉集』巻第10-2024~2028

訓読

2024
万代(よろづよ)にたづさはり居(ゐ)て相見(あひみ)とも思ひ過ぐべき恋にあらなくに
2025
万代(よろづよ)に照るべき月も雲隠(くもがく)り苦しきものぞ逢はむと思へど
2026
白雲(しらくも)の五百重(いほへ)に隠(かく)り遠くとも宵(よひ)さらず見む妹(いも)があたりは
2027
我(あ)がためと織女(たなばたつめ)のそのやどに織(お)る白栲(しろたへ)は織りてけむかも
2028
君に逢はず久しき時ゆ織る服(はた)の白栲衣(しろたへごろも)垢(あか)づくまでに

意味

〈2024〉
 千年も万年も手に手を取り合って二人一緒に暮らし見つめ合っていようとも、簡単に思いが晴れてなくなるような、そんななまじっかな恋ではない。
〈2025〉
 千年も万年も照り続ける月も、時に雲に隠れるのは辛い。そのように、思うように逢えないのは 本当に苦しい。いついつまでも逢っていたいのに。
〈2026〉
 白雲の幾重にも重なる彼方に隠れ、遠く隔たっていても、毎夜毎夜欠かさずに見よう。あの子がいるあたりを。
〈2027〉
 私のためにと織女が家で織っていたあの白布は、もう織り上げてしまっただろうか。
〈2028〉
 あなたにお逢いできない長い間、ずっと織り続けた真っ白な着物は、もう手垢がつくまでになっています。

鑑賞

 『柿本人麻呂歌集』から「七夕」の歌5首。2024~2027は牽牛の歌。2024の「万代に」は、万年もの長い間、永遠に、の意。「たづさはり居て」は、一緒にいて、手を取り合って。「相見とも」は、見つめ合っていたとしても。「思ひ過ぐ」の「過ぐ」は、なくなる。思いがなくなる。「恋にあらなくに」は、恋ではないことだ。2025の「万代に照るべき月」は、永遠に輝いているはずの月。「雲隠り」は、雲に隠れてしまうこと。上3句は「苦しき」を導く譬喩式序詞。「逢はむと思へど」は、逢おうと思っているのだけれど。

 
2026の「白雲の五百重に隠り」は、白雲が幾重にも重なっている彼方に隠れ。「遠くとも」の原文「雖遠」で、トホケドモと訓むものもあります。遠く離れていたとしても。「宵さらず」は、宵にはいつも、毎晩欠かさず。「見む」は、見よう、眺めよう。「妹があたりは」は、妻が住んでいるあたりを。2027の「そのやどに」は、彼女の家(機屋)で。「白栲」は、楮(こうぞ)の繊維から採った糸で織った白い布。「織りてけむかも」の「けむ」は、過去推量。「かも」は、疑問。織り上がっただろうか、いやどうだろうか。

 
2028は、上の2027に呼応した織女の歌。「君に逢はず」は、あなたに逢わないまま。「久しき時ゆ」の「ゆ」は、起点・経由点を示す格助詞。「織る服の」の「服」は、織る布。「白栲衣」は、真っ白な布でで作った衣。「垢づくまでに」は、垢で汚れてしまうほどに。「垢づく」は、体の垢がつくというより、汚れるほどになったの意で、夫恋しい心から、手につかなかった意。時間の抽象的表現を避け、衣・機織り・垢といった具体物に託して、忍耐の歳月を感覚的に伝えています。
 
 1996からここまで、七夕の夜以前の逢えぬ嘆き、それに続き当夜の逢会と翌朝の別れの様子を、登場人物に身を置いて詠んだ歌が配列され、「七夕」の物語が完成しています。このあとに5首続きますが、時間の逆行や第三者の立場で詠んだものもあり、補遺歌とみられます。
 


『万葉集』クイズ

 それぞれの歌のの中に当てはまる語を、ひらがなで答えてください。

  1. 多摩川に〇〇〇手作りさらさらに何そこの児のここだ愛しき
  2. 信濃道は今の墾り道刈りばねに足踏ましなむ〇〇はけ我が背
  3. 紫草のにほへる妹を憎くあらば〇〇〇〇ゆゑにあれ恋ひめやも
  4. この〇〇の消残る時にいざ行かな山橘の実の照るも見む
  5. 春過ぎて夏来るらし白妙の〇〇〇乾したり天の香具山
  6. いづくにか船泊すらむ安礼の埼漕ぎたみ行きし〇〇〇〇小舟
  7. いざ子どもはやく日本へ大伴の御津の〇〇〇〇待ち恋ひぬらむ
  8. 飛ぶ鳥の〇〇〇の里を置きて去なば君があたりは見えずかもあらむ
  9. 石麻呂に我れ物申す夏痩せによしといふものぞ〇〇〇捕り食せ
  10. 〇〇〇〇に行くは誰が背と問ふ人を見るが羨しさ物思ひもせず


【解答】 1.さらす 2.くつ(沓) 3.ひとづま(人妻) 4.ゆき(雪) 5.ころも(衣) 6.たななし(棚無し) 7.はままつ(浜松) 8.あすか(明日香) 9.むなぎ(鰻) 10.さきもり(防人)

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