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巻第11(索引)万葉集(掲載歌の索引)古典に親しむ

『万葉集』巻第11-2824~2827

訓読

2824
思ふ人(ひと)来(こ)むと知りせば八重葎(やへむぐら)覆(おほ)へる庭に玉(たま)敷(し)かましを
2825
玉敷ける家も何せむ八重葎(やへむぐら)覆(おほ)へる小屋(をや)も妹(いも)と居(を)りせば
2826
かくしつつ有り慰めて玉の緒(を)の絶えて別ればすべなかるべし
2827
紅(くれなゐ)の花にしあらば衣手(ころもで)に染(そ)め付け持ちて行くべく思ほゆ

意味

〈2824〉
 お慕いしているあなたがおいでになると知っていましたら、雑草に覆われた庭をきれいにし、玉を敷いてお待ちしましたのに。
〈2825〉
 玉を敷いた家が何になろうか、おまえとさえいれば、たとえ八重むぐらの生い茂った小屋でもいいのだ。
〈2826〉
 こうしていつもそばにいて慰められているけれど、仲が途絶えて別れたらどんなにやるせないことでしょう。
〈2827〉
 もしもあなたが紅の花であったなら、着物の袖に染め付けて持ち歩きたいほどに思っている。

鑑賞

 作者未詳の問答歌2組。2824は女の歌、2825はそれに答えた男の歌。2824の「思ふ人」は、愛する人、待ち焦がれていた人。「八重葎」は、幾重にも重なって生い茂るつる草。手入れの届かない荒れた家の象徴。「玉」は、美しい小石。小石を敷くのは貴人を迎える時の礼とされていました。「~せば~まし」は、反実仮想。もし~だったならば~だろう。思いがけず恋人を迎えた時の喜びの歌です。「玉を敷けばよかった」という後悔の形をとっていますが、その本心は「あなたが来てくれて、飛び上がるほど嬉しい」という歓喜にあります。突然の訪問に対する驚きと、何の準備もできていなかった気恥ずかしさを、最高級の比喩(玉を敷く)で表現しています。2825の「何せむ」は、何になろうか。「妹と居りせば」は、あなたと一緒にいるならば。原文「妹与居者」で、イモトシヲラバ、イモトヲリテバなどと訓むものもあります。相手の語をそのまま捉え、典型的な答歌となっています。

 2826は女の歌、2827はそれに答えた男の歌。
2826の「かくしつつ」は、このようにしつつで、現在の夫婦関係を指したもの。「玉の緒の」は「絶ゆ」の比喩的枕詞。「絶えて別れば」は、仲が絶えて別れたならば。「すべなかるべし」は、やるせないことだろう。2827の「紅」は、べに花。「花にしあらば」の「し」は、強意の副助詞。「衣手」は、着物の袖。「染め付け持ちて」は、色を染み込ませて、自分のものとして持つ意。「行くべく思ほゆ」は、持って行くことができるのにと思われる。男が旅に出る際の悲別の歌のようであり、答歌として強いて添わせたものとする見方があります。
 


和歌の修辞技法

  • 枕詞(まくらことば)
    序詞とともに万葉以来の修辞技法で、ある語句の直前に置いて、印象を強めたり、声調を整えたり、その語句に具体的なイメージを与えたりする。序詞とほぼ同じ働きをするが、枕詞は5音句からなる。
  • 序詞(じょことば)
    作者の独創による修辞技法で、7音以上の語により、ある語句に具体的なイメージを与える。特定の言葉や決まりはない。
  • 掛詞(かけことば)
    縁語とともに古今集時代から発達した、同音異義の2語を重ねて用いることで、独自の世界を広げる修辞技法。一方は自然物を、もう一方は人間の心情や状態を表すことが多い。
  • 縁語(えんご)
    1首の中に意味上関連する語群を詠みこみ、言葉の連想力を呼び起こす修辞技法。掛詞とともに用いられる場合が多い。
  • 体言止め
    歌の末尾を体言で止める技法。余情が生まれ、読み手にその後を連想させる。万葉時代にはあまり見られず、新古今時代に多く用いられた。
  • 倒置法
    主語・述語や修飾語・被修飾語などの文節の順序を逆転させ、読み手の注意をひく修辞技法。
  • 句切れ
    何句目で文が終わっているかを示す。万葉時代は2・4句切れが、古今集時代は3句切れが、新古今時代には初・3句切れが多い。
  • 歌枕
    歌に詠まれた地名のことだが、古今集時代になると、それぞれの地名が特定の連想を促す言葉として用いられるようになった。

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