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巻第13(索引)万葉集(掲載歌の索引)古典に親しむ

『万葉集』巻第13-3222

訓読

三諸(みもろ)は 人の守(も)る山 本辺(もとへ)には 馬酔木(あしび)花咲き 末辺(すゑへ)には 椿(つばき)花咲く うらぐはし 山そ 泣く子守(も)る山

意味

みもろの山は、人々が大切に守っている山だ。麓のあたりには馬酔木の花が咲いており、山頂のあたりには、椿の花が咲く。まことに美しくすばらしい山だ。泣いている赤子の子守をするように大切に守っている山だ。

鑑賞

 「みもろ」は神の君臨する所の意の普通名詞で、「神名備」に同じ。ここでは山の状態から奈良県明日香村の雷丘(いかづちのおか)とする説があります。「人の守る山」は、人がみだりに立ち入ったり樹木を伐採したりしないよう監視する山。「本辺」は、山の麓あたり。「馬酔木」は、まだ早春とは言い難い寒い時期に白またはややピンクがかった小さな花を咲かせます。有毒植物であり、馬が誤って食べると苦しがって、酔っぱらったような動きをするというので「馬酔木」と書きます。「末辺」は、山頂のあたり。「椿」は日本原産であり古文献にも多く登場し、聖樹として大切にされてきました。「うらぐはし」は「うら+くはし」で、「うら」は、内側に霊力が宿る意の接頭語。「くはし」は、完璧な美しさ、霊妙さをいう賛美表現で、『万葉集』では「細」「麗」「妙」の字があてられています。「泣く子守る山」は、上の「人の守る山」を言い換えたもので、山に対する愛しみの深さを表しており、集中独自な表現となっています。

 この歌の成立時期について
窪田空穂は、「短句は四音をもってするものが多く、結尾は、五・三・七音という、古風な形をもってしている点も、この歌の古く、また庶民の謡い物であったことを思わせる」と言っています。
 


長歌と短歌

 長歌は、「5・7・5・7・7」の短歌に対する呼び方で、5音と7音を交互に6句以上並べて最後は7音で結ぶ形の歌です。長歌の後にはふつう、反歌と呼ぶ短歌を一首から数首添え、長歌で歌いきれなかった思いを補足したり、長歌の内容をまとめたりします。

 長歌の始まりは、古代の歌謡にあるとみられ、『古事記』や『日本書紀』の中に見られます。多くは5音と7音の句を3回以上繰り返した形式でしたが、次第に5・7音の最後に7音を加えて結ぶ形式に定型化していきました。

 『万葉集』の時代になると、柿本人麻呂などによって短歌形式の反歌を付け加えた形式となります。漢詩文に強い人麻呂はその影響を受けつつ、長歌を形式の上でも表現の上でも一挙に完成させました。短歌は日常的に詠まれましたが、長歌は公式な儀式の場で詠まれる場合が多く、人麻呂の力量が大いに発揮できたようです。

 人麻呂には約20首の長歌があり、それらは平均約40句と長大です。ただ、長歌は『万葉集』には260余首収められていますが、平安期以降は衰退し、『古今集』ではわずか5首しかありません。

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『万葉集』各巻の部立て(巻第11~20)

  • 巻第11・巻第12
    部立てなし
  • 巻第13
    ① 雑歌 (3221番~3247番)
    ② 相聞 (3248番~3304番)
    ③ 問答 (3305番~3322番)
    ④ 譬喩歌 (3323番)
    ⑤ 挽歌 (3324番~3347番)
  • 巻第14(東歌)
    ① 雑歌 (3348番~3352番)
    ② 相聞 (3353番~3428番)
    ③ 譬喩歌 (3429番~3437番)
    ④ 雑歌 (3438番~3454番)
    ⑤ 相聞 (3455番~3566番)
    ⑥ 防人歌 (3567番~3571番)
    ⑦ 譬喩歌 (3572番~3576番)
    ⑧ 挽歌 (3577番)
  • 巻第15
    部立てなし
  • 巻第16
    由縁有る雑歌
  • 巻第17~20
    部立てなし
古典に親しむ

万葉集・竹取物語・枕草子などの原文と現代語訳。