本文へスキップ

巻第4(索引)万葉集(掲載歌の索引)古典に親しむ

『万葉集』巻第4-782

訓読

風高く辺(へ)には吹けども妹(いも)がため袖(そで)さへ濡(ぬ)れて刈れる玉藻(たまも)ぞ

意味

風が激しく海辺に吹いていましたが、あなたに贈るために、着物の袖まで濡らして刈り取った藻ですよ。

鑑賞

 題詞に「紀女郎(きのいらつめ)、物をつつみて友に贈れる歌一首」とあり、紀女郎が、何らかのみやげ物を玉藻に包んで女友達に贈った歌です。「風高く」は、漢詩文の「風高」に拠る表現で、風が激しい意。「辺」は、海岸。「玉藻」の「玉」は、美称。人に物を贈る時には、苦労して手に入れた物だと言う、上代の習わしに従っています。また、贈り物の中身ではなく、それを包む藻のことだけを詠んでいるところに、郎女の気働きと機智があり、包みにさえも価値を付加して期待を抱かせ、友を喜ばせようとしているのでしょう。贈り物の中身は伏せられていますが、真珠だったのでしょうか。

 
紀女郎は奈良中期の人で、名は小鹿(おしか)。安貴王(あきのおおきみ)の妻でしたが、夫の裏切りにあい、巻第4-643~645で恨みの歌を詠んでいます。そして、その後出会った年下の大伴家持との贈答歌(巻第4-762~764ほか)で知られています。『万葉集』には、巻第4・8に計12首の短歌を残し、技巧的で妖艶、万葉後期の典型的な作風を示す歌人の一人とされます。
 


和歌の修辞技法

  • 枕詞(まくらことば)
    序詞とともに万葉以来の修辞技法で、ある語句の直前に置いて、印象を強めたり、声調を整えたり、その語句に具体的なイメージを与えたりする。序詞とほぼ同じ働きをするが、枕詞は5音句からなる。
  • 序詞(じょことば)
    作者の独創による修辞技法で、7音以上の語により、ある語句に具体的なイメージを与える。特定の言葉や決まりはない。
  • 掛詞(かけことば)
    縁語とともに古今集時代から発達した、同音異義の2語を重ねて用いることで、独自の世界を広げる修辞技法。一方は自然物を、もう一方は人間の心情や状態を表すことが多い。
  • 縁語(えんご)
    1首の中に意味上関連する語群を詠みこみ、言葉の連想力を呼び起こす修辞技法。掛詞とともに用いられる場合が多い。
  • 体言止め
    歌の末尾を体言で止める技法。余情が生まれ、読み手にその後を連想させる。万葉時代にはあまり見られず、新古今時代に多く用いられた。
  • 倒置法
    主語・述語や修飾語・被修飾語などの文節の順序を逆転させ、読み手の注意をひく修辞技法。
  • 句切れ
    何句目で文が終わっているかを示す。万葉時代は2・4句切れが、古今集時代は3句切れが、新古今時代には初・3句切れが多い。
  • 歌枕
    歌に詠まれた地名のことだが、古今集時代になると、それぞれの地名が特定の連想を促す言葉として用いられるようになった。

【PR】

古典に親しむ

万葉集・竹取物語・枕草子などの原文と現代語訳。