| 訓読 |
風高く辺(へ)には吹けども妹(いも)がため袖(そで)さへ濡(ぬ)れて刈れる玉藻(たまも)ぞ
| 意味 |
風が激しく海辺に吹いていましたが、あなたに贈るために、着物の袖まで濡らして刈り取った藻ですよ。
| 鑑賞 |
題詞に「紀女郎(きのいらつめ)、物をつつみて友に贈れる歌一首」とあり、紀女郎が、何らかのみやげ物を玉藻に包んで女友達に贈った歌です。「風高く」は、漢詩文の「風高」に拠る表現で、風が激しい意。「辺」は、海岸。「玉藻」の「玉」は、美称。人に物を贈る時には、苦労して手に入れた物だと言う、上代の習わしに従っています。また、贈り物の中身ではなく、それを包む藻のことだけを詠んでいるところに、郎女の気働きと機智があり、包みにさえも価値を付加して期待を抱かせ、友を喜ばせようとしているのでしょう。贈り物の中身は伏せられていますが、真珠だったのでしょうか。
紀女郎は奈良中期の人で、名は小鹿(おしか)。安貴王(あきのおおきみ)の妻でしたが、夫の裏切りにあい、巻第4-643~645で恨みの歌を詠んでいます。そして、その後出会った年下の大伴家持との贈答歌(巻第4-762~764ほか)で知られています。『万葉集』には、巻第4・8に計12首の短歌を残し、技巧的で妖艶、万葉後期の典型的な作風を示す歌人の一人とされます。

和歌の修辞技法
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