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ヘンデルの『水上の音楽』

 数あるクラシック音楽の中には「季節」が感じられる楽曲が少なからずありますね。メンデルスゾーンの『真夏の夜の夢』とかシューベルトの『冬の旅』とかシューマンの交響曲第1番『』とか・・・。バロック音楽の重要な作曲家・ヘンデルの代表作の一つである『水上の音楽』もそのような音楽ではないでしょうか。その涼しげな題名からして、暑い夏にピッタリ。凍えそうな冬にはあまり聴く気にならないです。

 『水上の音楽』は、今から約300年前の1717年7月に、ロンドンのテムズ川で、国王ジョージ1世のために川遊びが催されたときに演奏された管弦楽曲集です。川遊びといってもその規模は豪華絢爛で、50人ものオーケストラを丸ごと船に乗せて演奏したといいますから驚きます。最初にこの曲を聴いたときは、その明るく華やかな旋律から、てっきり夏の日差しがまぶしい川面での演奏かと思い込んでいたのですが、実際には夜の8時ごろから翌朝4時半まで夜通しかけて行われたんですね。ずいぶん元気です。

 ジョージ1世は、趣向を凝らしたこの演奏にいたく感動し、約1時間かかるこの曲を2回もアンコールしたといいますから、とても盛り上がったんですね。50人の楽員に支払われたギャラが1人150ポンドだったという記録も残っているそうです。ただ、ヘンデルの自筆譜が残っていないため、どの曲順で演奏されたのか長らく不明で、さまざまな版が存在しています(最近ではほぼ結論が出ているって)。

 愛聴盤は、ガーディナー指揮、イギリス・バロック管弦楽団による1991年の録音です。オリジナル楽器による鋭敏な演奏はまことにアグレッシブで、録音も優秀です。皆さまも、夏の暑い日にはこの曲を聴いて、ぜひ涼んでくださいな。

ヘンデル(1685〜1759年)
 ドイツ出身でイタリアで成功、後にイギリスで活躍した後期バロック音楽の作曲家・オルガニスト。特にイタリア語のオペラ・セリアや英語のオラトリオの作曲で知られる。バッハが「音楽の父」と評されるのに対し、日本ではヘンデルを「音楽の母」と呼ぶことがある。
 

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ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲『四季』

 ヴィヴァルディが残した器楽協奏曲は300曲をこえ、オペラも100編くらい作曲したそうですね。残念ながらオペラについてはその大部分は失われてしまったものの、彼はオペラ作家として認められるのをもっと願っていたといいます。そんなわけか、『四季』が表現する旋律はオペラ・スタイルに属しているようだと、この曲を録音したチョン・キョンファは語っています。ヴァイオリンによる情熱的な旋律は、オペラのプリ・マドンナにたとえることができる、って。

 雄弁で美しいヴァイオリンの音色に耳を傾けていますと、私たちそれぞれが思い描く四季折々の風景が見事に重なり、いろいろな自然物や人や動物が生き生きと活動している姿が眼前に浮かんでくるかのようです。ただし、ヴィヴァルディがこの曲で描いたのは、当然ながら彼が生まれ育ったイタリアのヴェネツィアの四季の風景です。私たちが思い描く景色とはちょっと違っているかもしれませんが、その内容は次のように解説されています。

【春】
第1楽章 アレグロ
 春がやってきた。小鳥はさえずりながら飛び回っている。そして小川のせせらぎに出会う。しかし、急に春の嵐がやってきて、雷が轟音を立て激しく雨が降る。やがて嵐は去り、再び小鳥たちが楽しげにさえずる声が聴こえる。小鳥の声をソロ・ヴァイオリンが高らかに華やかにうたいあげる。
第2楽章 ラルゴ
 風にそよぐ牧場の樹々の音と、のんびりと吠える牧羊犬の声で始まる。花が咲き乱れる牧草地で、羊飼の少年は穏やかに眠っていて、寂寞とした犬の声が辺りを取り巻く。弦楽器の静かな旋律にソロヴァイオリンがのどかなメロディを奏でる。ヴィオラの低い音色が吠える犬を表現している。
第3楽章 アレグロ
 春の日差しの中、農夫と羊飼いの少年が陽気に踊る。
 
【夏】
第1楽章 アレグロ・ノン・モルト−アレグロ
 灼熱の太陽が照りつける暑さで、人も羊の群れもぐったりしている。松の木も燃えそうに熱い。けだるさを破るようにカッコウの声が聞こえる。そしてキジバトの声も。そよ風が北風に変わり、荒く猛々しく牧場を壊し、穀物を吹き飛ばす。少年は泣きじゃくるが、北風は容赦なく吹きつける。ヴァイオリンの一瞬一瞬の“間”を挟んだ音の連続が荒れる嵐を表現している。
第2楽章 アダージョ
 暑さにくたびれた羊飼いの少年は眠り始めようとするが、稲妻と雷鳴の轟きで眠るどころではない。さらにブヨやハエが周りにすさまじくブンブン音を立てる。それは甲高い音でソロヴァイオリンによって奏でられる。
第3楽章 プレスト
 またしても更に激しい嵐が襲ってくる。誇らしげに伸びていたる穀物を打ち倒してしまう。

【秋】
第1楽章 アレグロ
 農夫たちが収穫が無事に終えて大騒ぎ。ブドウ酒が惜しげもなく注がれる。彼らは、ほっとして眠りに落ちる。
第2楽章 アダージョ・モルト
 大騒ぎは次第に弱まり、酒はすべての者を無意識のうちに眠りに誘う。チェンバロのアルペジオに支えられてソロヴァイオリンは眠くなるような長音を弾く。
第3楽章 アレグロ
 夜が明け、狩人が犬を従え狩猟に出かける。獲物は彼らの追跡から逃げ惑うが、やがて傷つき、獲物は犬と奮闘して息絶える。

【冬】
第1楽章 アレグロ・ノン・モルト
 冷たい雪の中を歩き回る。非情な寒さから歯が噛み合わない。さらには寒さをまぎらすための足踏みも。ソロヴァイオリンの重音が歯のガチガチを表現している。
第2楽章 ラルゴ
 雰囲気はがらりと変わり、暖かな室内。外は雨が降っている。暖炉の傍らで満足そうに休息。ゆっくりしたテンポで平和な時間が流れる。伴奏のピツィカートは、しとしとと降る雨を描写している。
第3楽章 アレグロ
 氷の上を、ゆっくりと用心深く、転ばないように歩いている。ソロヴァイオリンは弓を長く使ってこの旋律を弾き、ゆっくりと静かに続く。しかし突然、滑って氷に叩きつけられる。氷が裂けて割れ、北風がビュービュー吹きつける。そんな冬だが、もうすぐ楽しい春がやってくる。
 

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