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おもな歌人の歌万葉集(掲載歌の索引)古典に親しむ

高橋虫麻呂の歌(索引)

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  1. 巻3-319  なまよみの甲斐の国うち寄する駿河の国と此方此方の・・・(長歌)
  2. 巻3-320  富士の嶺に降り置く雪は六月の十五日に消ぬればその夜降りけり
  3. 巻3-321  富士の嶺を高み畏み天雲もい行きはばかり棚引くものを
  4. 巻6-971  白雲の龍田の山の露霜に色づく時に打ち越えて・・・(長歌)
  5. 巻6-972  千万の軍なりとも言挙げせず取りて来ぬべき士とぞ思ふ
  6. 第8-1497 筑波嶺に我が行けりせば霍公鳥山彦響め鳴かましやそれ
  7. 巻9-1738 しなが鳥安房に継ぎたる梓弓末の珠名は胸別の・・・(長歌)
  8. 巻9-1739 金門にし人の来立てば夜中にも身はたな知らず出でてそ逢ひける
  9. 巻9-1740 春の日の霞める時に墨吉の岸に出でゐて釣船の・・・(長歌)
  10. 巻9-1741 常世辺に住むべきものを剣刀己が心から鈍やこの君
  11. 巻9-1742 級照る片足羽川のさ丹塗りの大橋の上ゆ紅の・・・(長歌)
  12. 巻9-1743 大橋の頭に家あらばま悲しく独り行く児に宿貸さましを
  13. 巻9-1744 埼玉の小埼の沼に鴨ぞ羽霧る己が尾に降り置ける霜を掃ふとにあらし
  14. 巻9-1745 三栗の那賀に向へる曝井の絶えず通はむそこに妻もが
  15. 巻9-1746 遠妻し多珂にありせば知らずとも手綱の浜の尋ね来なまし
  16. 巻9-1747 白雲の龍田の山の瀧の上の小椋の嶺に咲きををる・・・(長歌)
  17. 巻9-1748 わが行きは七日は過ぎじ竜田彦ゆめこの花を風にな散らし
  18. 巻9-1749 白雲の竜田の山を夕暮にうち越え行けば滝の上の・・・(長歌)
  19. 巻9-1750 暇あらばなづさひ渡り向つ峰の桜の花も折らましものを
  20. 巻9-1751 島山をい行き廻れる川沿ひの岡辺の道ゆ昨日こそ・・・(長歌)
  21. 巻9-1752 い行き逢ひの坂のふもとに咲きををる桜の花を見せむ子もがも
  22. 巻9-1753 衣手常陸の国の二並ぶ筑波の山を見まく欲り・・・(長歌)
  23. 巻9-1754 今日の日にいかにか及かむ筑波嶺に昔の人の来けむその日も
  24. 巻9-1755 鴬の卵の中に霍公鳥独り生れて己が父に・・・(長歌)
  25. 巻9-1756 かき霧らし雨の降る夜をほととぎす鳴きて行くなりあはれその鳥
  26. 巻9-1757 草枕旅の憂へを慰もる事もありやと筑波嶺に・・・(長歌)
  27. 巻9-1758 筑波嶺の裾廻の田井に秋田刈る妹がり遣らむ黄葉手折らな
  28. 巻9-1759 鷲の住む筑波の山の裳羽服津のその津の上に率ひて・・・(長歌)
  29. 巻9-1760 男の神に雲立ちのぼり時雨ふり濡れ通るともわれ帰らめや
  30. 巻9-1780 牡牛の三宅の潟にさし向かふ鹿島の崎にさ丹塗りの・・・(長歌)
  31. 巻9-1781 海つ道の凪ぎなむ時も渡らなむかく立つ波に船出すべしや
  32. 巻9-1807 鶏が鳴く吾妻の国に古にありける事と今までに・・・(長歌)
  33. 巻9-1808 勝鹿の真間の井を見れば立ち平し水汲ましけむ手児奈し思ほゆ
  34. 巻9-1809 葦屋の菟原処女の八年子の片生ひの時ゆ小放りに・・・(長歌)
  35. 巻9-1810 葦屋の菟原処女の奥津城を行き来と見れば哭のみし泣かゆ
  36. 巻9-1811 墓の上の木の枝靡けり聞きし如茅渟壮士にし寄りにけらしも

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高橋虫麻呂

 奈良時代の人(生没年未詳)。下級官吏であったらしく閲歴も不明。『万葉集』中、明確に虫麻呂の作と題するものは、732年(天平4年)に藤原宇合が西海道節度使として遣わされたときの送別の歌2首(巻第6)のみで、ほかに『高橋連虫麻呂歌集』に出づとされる年代不明の歌群があり、これらも虫麻呂の作品と認められている。常陸国の官吏としての赴任のほか旅にある歌がほとんどで、地方の自然や伝説、民俗行事に触れた秀作を残している。『万葉集』には、長歌14首、短歌19首、旋頭歌1首。作者に異説ある長・短歌各1首を含めると計36首。 

高橋虫麻呂の歌の特徴

 奈良時代初期に活躍した高橋虫麻呂は、『万葉集』の中でもきわめて個性的で異彩を放つ歌人です。山上憶良や山部赤人らと同時代を生きましたが、彼らのいずれとも異なる「伝説・説話的歌風」と「物語性の高い叙事詩的叙情」を確立しました。虫麻呂の歌における主な特徴は以下の通りです。

  1. 説話・伝承を題材とした物語的構成
    虫麻呂の最大の特色は、各地に伝わる伝説や説話を長歌の形式でドラマチックに描き出した点です。兎原処女(うないおとめ)の悲恋、珠名娘子(たまなおとめ)、浦の島子(浦島太郎)などを題材にし、登場人物の葛藤や運命の儚さを情緒豊かに表現しました。単なる情景描写にとどまらず、時間の経過や人物の行動、心理描写を巧みに織り交ぜた長編ストーリーを展開します。
  2. 旅情と土地の記憶を描く「旅人」の視点
    虫麻呂は藤原宇合に仕え、常陸国(現在の茨城県)をはじめとする地方を巡りました。筑波山、富士山、勝鹿の真間(まま)の娘子など、東国の風物や名所を歌に詠み込みました。旅先で見聞きした伝承や風景に対し、旅人としての第三者的かつ深い同情を寄せる視点が貫かれています。
  3. 表現の巧みさ
    表現上の特徴として、長歌における対句表現や句切れのテンポが非常に滑らかで、壮大なストーリーを朗々と詠み上げるのに適したリズムを持っています。また、長歌で物語を提示したあと、短歌形式の反歌において、その物語から導き出される哀傷や余韻を濃密に凝縮させます。

 山上憶良が「社会や現実の苦悩」に目を向けたのに対し、高橋虫麻呂は「ロマン溢れる物語や伝承の世界」に美を見出し、独自の叙事詩的万葉歌風を確立した歌人と言えます。

古典に親しむ

万葉集・竹取物語・枕草子などの原文と現代語訳。