孫子に学ぼう
勢いとは、有利な情況を見抜いたうえで臨機応変に処することだ。
計画や準備が勝利をもたらす。計画や準備のない戦いは論外だ。
戦争には拙速(まずくても速い)というのはあっても、上手いけど長びくという例を知らない。
戦法として、敵国を傷つけずにそのまま降伏させるのがいちばんで、打ち破って屈伏させるのは次善にすぎない。
百戦百勝といっても最高にすぐれたものではない。敵兵と戦わずして屈伏させるのが最高の戦い方だ。
上下の人々が同じ心をもっていれば勝つ。
万全の態勢を整えて油断している敵に当たれば勝つ。
敵を知り己を知っていれば百戦しても危険はない。
戦い上手な者は、まず自軍をしっかり守りだれにもうち勝つことのできない態勢を整えたうえで、敵が弱点をあらわしてだれもがうち勝てるような態勢になるのを待つ。
守備が上手な者は大地の底の底にひそみ隠れ、攻撃が上手な者は天界の上の上で行動する。
戦い上手といわれた人は、勝ちやすい機会をとらえて勝ったものだ。だから、その勝利は人目を引く勝利ではなく、智謀すぐれた名誉もないし、その武勇が称賛されることもない。
勝利する者は開戦前にまず勝利を得て戦争しようとするが、敗北する軍は戦争を始めてから勝利を求めるものだ。
勝利する者の戦い方は、ちょうど満々とたたえた水を千仞の谷に一気に落とすように、相手に守る態勢を与えない。それが戦う態勢を整えるということだ。
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戦いの勢いは奇策と正攻法の運用にすぎないが、この組み合わせの無限の変化によって勝つことができる。
敵に分かるような形を示すと敵は必ずそれについてくるし、敵に何かをあたえると必ずそれを取りに来る。
戦い上手な者は、勢いによって勝利を得ようと求め、人材に頼ろうとはしない。
戦い上手な者は、自分が主導権を握り、相手を翻弄し相手に翻弄されることがない。
攻撃して必ず奪取できるのは、敵の守備していない所を攻めるからだ。
軍の態勢をとる極致は無形になることである。
軍の形は水の形のようなものだ。
軍の形は敵が充実しているところを避けて隙のある虚のところを攻撃する。
遠回りして敵を安心させ、そのことで最短とし、害悪を利益に転じる。
戦争は敵をあざむくことが基本であり、有利な情況で動き、分散や集合によって形を変化させなければならない。
行動は、風のように迅速に動き、林のように静まり、燃える火のように侵奪し、暗闇のように知られないようにし、山のように動かない。
戦い上手な者は、相手の士気が高いときは避け、衰えたときに撃つ。
整然とした旗ならびには戦いを仕掛けず、堂々と充実した陣立てには攻撃をかけない。
智者は、必ず利害の両側面について考える。
将軍となる者は、物静かで思慮深い。
包囲した敵には逃げ道を開き、進退きわまった敵を追い詰めてはならない。
敵の襲来がないのを期待するのではなく、いつやって来てもよい備えがこちらにあることを頼みとする。
決死の覚悟でいては殺され、生きることばかり考えていては捕虜にされ、気短で激しやすいのは侮られ、清廉なのは辱められ、兵士を愛してやまないのは苦労させられる。
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敵の使者がへりくだった口上を述べたときは、実際は進行のための準備をしている。反対に強き一点張りのときは撤退の準備をしている。
やたらに報償を出したり、しきりに罰を科したりするのは、いずれも組織が行き詰まっている証拠だ。
部下に怒鳴りちらした後、その離反を心配するのは、自分が自分の判断の間違いをさらけ出している証拠である。
深謀遠慮を欠いて敵を軽く見ると、必ずやっつけられる。
成功しても名誉を求めず、失敗しても責任回避をしない。
味方の実力を把握していても、敵の実力を知らなければ、勝敗は五分五分である。
戦上手な者は、いったん行動を起こせば迷わないし、戦いが起こっても窮することはない。
天の時と地の利を得て戦う者は、つねに不敗である。
最初は処女のように振る舞い、敵の油断を誘って安心させ、そこを一気に攻め立てれば、敵はその攻撃を防げない。
有利な情況でなければ作戦を開始せず、得るものがなければ作戦を避け、危険ならば戦わない。
兵士を死地に投入してこそ、活路は開ける。
百金の報酬を惜しみ、敵の情報を十分に集められないのは、兵士や人民に対する思いやりに欠けており、問題外である。
聡明な君主やすぐれた将軍が戦って敵に勝ち、人並みはずれた成功を収めることができるのは、あらかじめ情報を探り出すからだ。
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