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巻第10(索引)<万葉集(掲載歌の索引)古典に親しむ

『万葉集』巻第10(索引)

〈後半〉2082番~2350番

  1. 天の川川門八十ありいづくにか君がみ舟を我が待ち居らむ
  2. 秋風の吹きにし日より天の川瀬に出で立ちて待つと告げこそ
  3. 天の川去年の渡り瀬荒れにけり君が来まさむ道の知らなく
  4. 天の川瀬々に白波高けども直渡り来ぬ待たば苦しみ
  5. 彦星の妻呼ぶ舟の引き綱の絶えむと君を我が思はなくに
  6. 渡り守舟出し出でむ今夜のみ相見て後は逢はじものかも
  7. 我が隠せる楫棹なくて渡り守舟貸さめやもしましはあり待て
  8. 天地の初めの時ゆ天の川い向ひ居りて一年に・・・(長歌)
  9. 高麗錦紐解きかはし天人の妻問ふ宵ぞ我れも偲はむ
  10. 彦星の川瀬を渡るさ小舟の得行きて泊てむ川津し思ほゆ
  11. 天地と別れし時ゆひさかたの天つしるしと定めてし・・・(長歌)
  12. 妹に逢ふ時片待つとひさかたの天の川原に月ぞ経にける
  13. さを鹿の心相思ふ秋萩のしぐれの降るに散らくし惜しも
  14. 夕されば野辺の秋萩うら若み露にぞ枯るる秋待ちかてに
  15. 真葛原なびく秋風吹くごとに阿太の大野の萩の花散る
  16. 雁がねの来鳴かむ日まで見つつあらむこの萩原に雨な降りそね
  17. 奥山に棲むといふ鹿の宵さらず妻どふ萩の散らまく惜しも
  18. 白露の置かまく惜しみ秋萩を折りのみ折りて置きや枯らさむ
  19. 秋田刈る刈廬の宿りにほふまで咲ける秋萩見れど飽かぬかも
  20. 我が衣摺れるにはあらず高松の野辺行きしかば萩の摺れるぞ
  21. この夕秋風吹きぬ白露に争ふ萩の明日咲かむ見む
  22. 秋風は涼しくなりぬ馬並めていざ野に行かな萩の花見に
  23. 朝顔は朝露負ひて咲くといへど夕影にこそ咲きまさりけれ
  24. 春されば霞隠りて見えずありし秋萩咲きぬ折りてかざさむ
  25. さ額田の野辺の秋萩時なれば今盛りなり折りてかざさむ
  26. ことさらに衣は摺らじをみなへし佐紀野の萩ににほひて居らむ
  27. 秋風は疾く疾く吹き来萩の花散らまく惜しみ競ひ立つ見む
  28. 我が宿の萩の末長し秋風の吹きなむ時に咲かむと思ひて
  29. 人皆は萩を秋と言ふよし我れは尾花が末を秋とは言はむ
  30. 玉梓の君が使ひの手折り来るこの秋萩は見れど飽かぬかも
  31. 我がやどに咲ける秋萩常ならば我が待つ人に見せましものを
  32. 手寸十名相 植ゑしも著く出で見ればやどの初萩咲きにけるかも
  33. 我が宿に植ゑ生ほしたる秋萩を誰れか標刺す我れに知らえず
  34. 手に取れば袖さへにほふ女郎花この白露に散らまく惜しも
  35. 白露に争ひかねて咲ける萩散らば惜しけむ雨な降りそね
  36. 娘女らに行き逢ひの早稲を刈る時になりにけらしも萩の花咲く
  37. 朝霧のたなびく小野の萩の花今か散るらむいまだ飽かなくに
  38. 恋しくは形見にせよと我が背子が植ゑし秋萩花咲きにけり
  39. 秋萩に恋尽さじと思へどもしゑや惜しまたも逢はめやも
  40. 秋風は日に異に吹きぬ高円の野辺の秋萩散らまく惜しも
  41. ますらをの心はなしに秋萩の恋のみにやもなづみてありなむ
  42. 我が待ちし秋は来りぬしかれども萩の花ぞもいまだ咲かずける
  43. 見まく欲り我が待ち恋ひし秋萩は枝もしみみに花咲きにけり
  44. 春日野の萩し散りなば朝東風の風にたぐひてここに散り来ね
  45. 秋萩は雁に逢はじと言へればか声を聞きては花に散りぬる
  46. 秋さらば妹に見せむと植ゑし萩露霜負ひて散りにけるかも
  47. 秋風に大和へ越ゆる雁がねはいや遠ざかる雲隠りつつ
  48. 明け暮れの朝霧隠り鳴きて行く雁は我が恋妹に告げこそ
  49. 我が宿に鳴きし雁がね雲の上に今夜鳴くなり国へかも行く
  50. さを鹿の妻どふ時に月をよみ雁が音聞こゆ今し来らしも
  51. 天雲の外に雁が音聞きしよりはだれ霜降り寒しこの夜は
  52. 秋の田の我が刈りばかの過ぎぬれば雁が音聞こゆ冬かたまけて
  53. 葦辺なる荻の葉さやぎ秋風の吹き来るなへに雁鳴き渡る
  54. おしてる難波堀江の葦辺には雁寝たるかも霜の降らくに
  55. 秋風に山飛び越ゆる雁がねの声遠ざかる雲隠るらし
  56. 朝にゆく雁の鳴く音は吾が如くもの念へかも声の悲しき
  57. 鶴がねの今朝鳴くなへに雁がねはいづくさしてか雲隠るらむ
  58. ぬばたまの夜渡る雁はおほほしく幾夜を経てかおのが名を告る
  59. あらたまの年の経ゆけばあどもふと夜渡る我れを問ふ人や誰れ
  60. このころの秋の朝明に霧隠り妻呼ぶ鹿の声のさやけさ
  61. さを鹿の妻ととのふと鳴く声の至らむ極み靡け萩原
  62. 君に恋ひうらぶれ居れば敷の野の秋萩しのぎさを鹿鳴くも
  63. 雁は来ぬ萩は散りぬとさを鹿の鳴くなる声もうらぶれにけり
  64. 秋萩の恋も尽きねばさを鹿の声い継ぎい継ぎ恋こそまされ
  65. 山近く家や居るべきさを鹿の声を聞きつつ寐寝かてぬかも
  66. 山の辺にい行く猟夫は多かれど山にも野にもさを鹿鳴くも
  67. あしひきの山より来せばさを鹿の妻呼ぶ声を聞かましものを
  68. 山辺にはさつ男のねらひ畏けどを鹿鳴くなり妻が目を欲り
  69. 秋萩の散りゆく見ればおほほしみ妻恋すらしさを鹿鳴くも
  70. 山遠き都にしあればさを鹿の妻呼ぶ声は乏しくもあるか
  71. 秋萩の散り過ぎゆかばさを鹿はわび鳴きせむな見ずはともしみ
  72. 秋萩の咲きたる野辺はさを鹿ぞ露を別けつつ妻問ひしける
  73. なぞ鹿のわび鳴きすなるけだしくも秋野の萩や繁く散るらむ
  74. 秋萩の咲たる野辺にさを鹿は散らまく惜しみ鳴き行くものを
  75. あしひきの山の常蔭に鳴く鹿の声聞かすやも山田守らす子
  76. 夕影に来鳴くひぐらしここだくも日ごとに聞けど飽かぬ声かも
  77. 秋風の寒く吹くなへ我が宿の浅茅が本にこほろぎ鳴くも
  78. 蔭草の生ひたるやどの夕影に鳴くこほろぎは聞けど飽かぬかも
  79. 庭草に村雨降りてこほろぎの鳴く声聞けば秋づきにけり
  80. み吉野の岩もとさらず鳴くかはづうべも鳴きけり川を清けみ
  81. 神なびの山下響み行く水にかはづ鳴くなり秋と言はむとや
  82. 草枕旅に物思ひ我が聞けば夕かたまけて鳴くかはづかも
  83. 瀬を早み落ちたぎちたる白波にかはづ鳴くなり朝夕ごとに
  84. 上つ瀬にかはづ妻呼ぶ夕されば衣手寒み妻まかむとか
  85. 妹が手を取石の池の波の間ゆ鳥が音異に鳴く秋過ぎぬらし
  86. 秋の野の尾花が末に鳴くもずの声聞きけむか片聞け我妹
  87. 秋萩に置ける白露朝な朝な玉としぞ見る置ける白露
  88. 夕立ちの雨降るごとに春日野の尾花が上の白露思ほゆ
  89. 秋萩の枝もとををに露霜置き寒くも時はなりにけるかも
  90. 白露と秋萩とには恋ひ乱れ別くことかたき我が心かも
  91. 我が宿の尾花押しなべ置く露に手触れ我妹子散らまくも見む
  92. 白露を取らば消ぬべしいざ子ども露に競ひて萩の遊びせむ
  93. 秋田刈る仮廬を作り我が居れば衣手寒く露ぞ置きにける
  94. このころの秋風寒し萩の花散らす白露置きにけらしも
  95. 秋田刈る苫手動くなり白露し置く穂田なしと告げに来ぬらし
  96. 春は萌え夏は緑に紅のまだらに見ゆる秋の山かも
  97. 妻ごもる矢野の神山露霜ににほひそめたり散らまく惜しも
  98. 朝露ににほひそめたる秋山にしぐれな降りそありわたるがね
  99. 九月の時雨の雨に濡れとほり春日の山は色づきにけり
  100. 雁が音の寒き朝明の露ならし春日の山をもみたすものは
  101. このころの暁露に我がやどの萩の下葉は色づきにけり
  102. 雁がねは今は来鳴きぬ我が待ちし黄葉早継げ待たば苦しも
  103. 秋山をゆめ人懸くな忘れにしその黄葉の思ほゆらくに
  104. 大坂を我が越え来れば二上に黄葉流る時雨ふりつつ
  105. 秋されば置く白露に我が門の浅茅が末葉色づきにけり
  106. 妹が袖巻来の山の朝露ににほふ黄葉の散らまく惜しも
  107. 黄葉のにほひは繁ししかれども妻梨の木を手折りかざさむ
  108. 露霜の寒き夕の秋風にもみちにけらし妻梨の木は
  109. 我が門の浅茅色づく吉隠の浪柴の野の黄葉散るらし
  110. 雁が音を聞きつるなへに高松の野の上の草ぞ色づきにける
  111. 我が背子が白栲衣行き触ればにほひぬべくももみつ山かも
  112. 秋風の日にけに吹けば水茎の岡の木の葉も色づきにけり
  113. 雁がねの来鳴きしなへに韓衣龍田の山はもみちそめたり
  114. 雁がねの声聞くなへに明日よりは春日の山はもみちそめなむ
  115. しぐれの雨間なくし降れば真木の葉も争ひかねて色づきにけり
  116. いちしろく時雨の雨は降らなくに大城の山は色づきにけり
  117. 風吹けば黄葉散りつつ少なくも吾の松原清くあらなくに
  118. 物思ふと隠らひ居りて今日見れば春日の山は色づきにけり
  119. 九月の白露負ひてあしひきの山のもみたむ見まくしもよし
  120. 妹がりと馬に鞍置きて生駒山うち越え来れば紅葉散りつつ
  121. 黄葉する時になるらし月人の桂の枝の色づく見れば
  122. 里ゆ異に霜は置くらし高松の野山づかさの色づく見れば
  123. 秋風の日に異に吹けば露を重み萩の下葉は色づきにけり
  124. 秋萩の下葉もみちぬあらたまの月の経ぬれば風をいたみかも
  125. まそ鏡南淵山は今日もかも白露置きて黄葉散るらむ
  126. 我がやどの浅茅色づく吉隠の夏身の上にしぐれ降るらし
  127. 雁がねの寒く鳴きしゆ水茎の岡の葛葉は色づきにけり
  128. 秋萩の下葉の黄葉花に継ぎ時過ぎゆかば後恋ひむかも
  129. 明日香川黄葉流る葛城の山の木の葉は今し散るらむ
  130. 妹が紐解くと結びて龍田山今こそ黄葉そめてありけれ
  131. 雁がねの寒く鳴きしゆ春日なる三笠の山は色づきにけり
  132. このころの暁露に我が宿の秋の萩原色づきにけり
  133. 夕されば雁の越えゆく龍田山時雨に競ひ色づきにけり
  134. さ夜更けてしぐれな降りそ秋萩の本葉の黄葉散らまく惜しも
  135. 故郷の初黄葉を手折り持ち今日ぞ我が来し見ぬ人のため
  136. 君が家の黄葉は早散りにけり時雨の雨に濡れにけらしも
  137. 一年にふたたび行かぬ秋山を心に飽かず過ぐしつるかも
  138. あしひきの山田作る子秀でずとも縄だに延へよ守ると知るがね
  139. さを鹿の妻喚ぶ山の岡辺なる早田は苅らじ霜は零るとも
  140. 我が門に守る田を見れば佐保の内の秋萩すすき思ほゆるかも
  141. 夕さらず河蝦鳴くなる三輪川の清き瀬の音を聞かくし良しも
  142. 天の海に月の舟浮け桂楫懸けて漕ぐ見ゆ月人壮士
  143. この夜らはさ夜更けぬらし雁が音の聞ゆる空ゆ月立ち渡る
  144. 我が背子がかざしの萩に置く露をさやかに見よと月は照るらし
  145. 心なき秋の月夜のもの思ふと寝の寝らえぬに照りつつもとな
  146. 思はぬに時雨の雨は降りたれど天雲はれて月夜清けし
  147. 萩の花咲きのををりを見よとかも月夜の清き恋まさらくに
  148. 白露を玉になしたる九月の有明の月夜見れど飽かぬかも
  149. 恋ひつつも稲葉かき分け家居れば乏しくもあらず秋の夕風
  150. 萩の花咲きたる野辺にひぐらしの鳴くなるなへに秋の風吹く
  151. 秋山の木の葉もいまだもみたねば今朝吹く風は霜も置きぬべく
  152. 高松のこの峰も狭に笠立てて満ち盛りたる秋の香のよさ
  153. 一日には千重しくしくに我が恋ふる妹があたりに時雨降る見ゆ
  154. 秋田刈る旅の廬りに時雨降り我が袖濡れぬ干す人なしに
  155. 玉たすき懸けぬ時なし我が恋は時雨し降らば濡れつつも行かむ
  156. 黄葉を散らす時雨の降るなへに夜さへぞ寒き独りし寝れば
  157. 天飛ぶや雁の翼の覆ひ羽のいづく漏りてか霜の降りけむ
  158. 秋山のしたひが下に鳴く鳥の声だに聞かば何か嘆かむ
  159. 誰そかれと我れをな問ひそ九月の露に濡れつつ君待つ我れを
  160. 秋の夜の霧立ちわたりおほほしく夢にぞ見つる妹が姿を
  161. 秋の野の尾花が末の生ひ靡き心は妹に寄りにけるかも
  162. 秋山に霜降り覆ひ木の葉散り年は行くとも我れ忘れめや
  163. 住吉の岸を田に墾り蒔きし稲かくて刈るまで逢はぬ君かも
  164. 太刀の後玉纒田居にいつまでか妹を相見ず家恋ひ居らむ
  165. 秋の田の穂の上に置ける白露の消ぬべくも我は思ほゆるかも
  166. 秋の田の穂向きの寄れる片寄りに我れは物思ふつれなきものを
  167. 秋田刈る刈廬を作り廬りしてあるらむ君を見むよしもがも
  168. 鶴が音の聞こゆる田居に廬りして我)れ旅なりと妹に告げこそ
  169. 春霞たなびく田居に廬つきて秋田刈るまで思はしむらく
  170. 橘を守部の里の門田早稲刈る時過ぎぬ来じとすらしも
  171. 秋萩の咲き散る野辺の夕露の濡れつつ来ませ夜は更けぬとも
  172. 色づかふ秋の露霜な降りそね妹が手本をまかぬ今夜は
  173. 秋萩の上に置きたる白露の消かもしなまし恋ひつつあらずは
  174. 我が宿の秋萩の上に置く露のいちしろくしも我れ恋ひめやも
  175. 秋の穂をしのに押しなべ置く露の消かもしなまし恋ひつつあらずは
  176. 露霜に衣手濡れて今だにも妹がり行かな夜は更けぬとも
  177. 秋萩の枝もとををに置く露の消かもしなまし恋ひつつあらずは
  178. 秋萩の上に白露置くごとに見つつぞ偲ふ君が姿を
  179. 我妹子は衣にあらなむ秋風の寒きこのころ下に着ましを
  180. 泊瀬風かく吹く宵は何時までか衣片敷き我がひとり寝む
  181. 秋萩を散らす長雨の降るころはひとり起き居て恋ふる夜ぞ多き
  182. 九月の時雨の雨の山霧のいぶせき我が胸誰を見ばやまむ
  183. 蟋蟀の待ち喜ぶる秋の夜を寝る験なし枕と我れは
  184. 朝霞鹿火屋が下に鳴くかはづ声だに聞かば我れ恋ひめやも
  185. 出でて去なば天飛ぶ雁の泣きぬべみ今日今日と言ふに年ぞ経にける
  186. さを鹿の朝伏す小野の草若み隠らひかねて人に知らゆな
  187. さを鹿の小野の草伏しいちしろく我がとはなくに人の知れらく
  188. 今夜の暁降ち鳴く鶴の思ひは過ぎず恋こそまされ
  189. 道の辺の尾花が下の思ひ草今さらさらに何をか思はむ
  190. 草深みこほろぎさはに鳴くやどの萩見に君はいつか来まさむ
  191. 秋づけば水草の花のあえぬがに思へど知らじ直に逢はざれば
  192. 何すとか君をいとはむ秋萩のその初花の嬉しきものを
  193. 臥いまろび恋ひは死ぬともいちしろく色には出でじ朝顔の花
  194. 言に出でて云はばゆゆしみ朝顔の穂には咲き出ぬ恋もするかも
  195. 雁がねの初声聞きて咲き出たる宿の秋萩見に来我が背子
  196. さを鹿の入野のすすき初尾花いづれの時か妹が手まかむ
  197. 恋ふる日の日長くしあれば我が園の韓藍の花の色に出でにけり
  198. 我が里に今咲く花のをみなへし堪へぬ情になほ恋ひにけり
  199. 萩の花咲けるを見れば君に逢はずまことも久になりにけるかも
  200. 朝露に咲きすさびたる月草の日くたつなへに消ぬべく思ほゆ
  201. 長き夜を君に恋ひつつ生けらずは咲きて散りにし花ならましを
  202. 我妹子に逢坂山のはだすすき穂には咲き出ず恋ひわたるかも
  203. いささめに今も見が欲し秋萩のしなひにあるらむ妹が姿を
  204. 秋萩の花野のすすき穂には出でず我が恋ひわたる隠り妻はも
  205. 我が宿に咲きし秋萩散り過ぎて実になるまでに君に逢はぬかも
  206. 我が宿の萩咲きにけり散らぬ間に早来て見べし奈良の里人
  207. 石橋の間々に生ひたるかほ花の花にしありけりありつつ見れば
  208. 藤原の古りにし里の秋萩は咲きて散りにき君待ちかねて
  209. 秋萩を散り過ぎぬべみ手折り持ち見れども寂し君にしあらねば
  210. 朝咲き夕は消ぬる月草の消ぬべき恋も我れはするかも
  211. 秋津野の尾花刈り添へ秋萩の花を葺かさね君が仮廬に
  212. 咲けりとも知らずしあらば黙もあらむこの秋萩を見せつつもとな
  213. 秋されば雁飛び越ゆる龍田山立ちても居ても君をしぞ思ふ
  214. 我が宿の葛葉日に異に色づきぬ来まさぬ君は何心ぞも
  215. あしひきの山さな葛もみつまで妹に逢はずや我が恋ひ居らむ
  216. 黄葉の過ぎかてぬ子を人妻と見つつやあらむ恋しきものを
  217. 君に恋ひ萎えうらぶれ我が居れば秋風吹きて月かたぶきぬ
  218. 秋の夜の月かも君は雲隠りしましく見ねばここだ恋しき
  219. 九月の有明の月夜ありつつも君が来まさば我れ恋ひめやも
  220. よしゑやし恋ひじとすれど秋風の寒く吹く夜は君をしぞ思ふ
  221. ある人のあな心なと思ふらむ秋の長夜を寝覚め臥すのみ
  222. 秋の夜を長しと言へど積もりにし恋を尽せば短くありけり
  223. 秋つ葉ににほへる衣我れは着じ君に奉らば夜も着るがね
  224. 旅にすら紐解くものを言繁みまろ寝ぞ我がする長きこの夜を
  225. しぐれ降る暁月夜紐解かず恋ふらむ君と居らましものを
  226. 黄葉に置く白露の色端にも出でじと思へば言の繁けく
  227. 雨降ればたぎつ山川岩に触れ君が砕かむ心は持たじ
  228. 祝部らが斎ふ社の黄葉も標縄越えて散るといふものを
  229. こほろぎの我が床の辺に鳴きつつもとな起き居つつ君に恋ふるに寐寝かてなくに
  230. はだすすき穂には咲き出ぬ恋をぞ我がする玉かぎるただ一目のみ見し人ゆゑに
  231. 我が袖に霰た走る巻き隠し消たずてあらむ妹が見むため
  232. あしひきの山かも高き巻向の岸の小松にみ雪降り来る
  233. 巻向の檜原もいまだ雲居ねば小松が末ゆ沫雪流る
  234. あしひきの山道も知らず白橿の枝もとををに雪の降れれば
  235. 奈良山の嶺なほ霧らふうべしこそ籬が下の雪は消ずけれ
  236. こと降らば袖さへ濡れて通るべく降りなむ雪の空に消につつ
  237. 夜を寒み朝門を開き出で見れば庭もはだらにみ雪降りたり
  238. 夕されば衣手寒し高松の山の木ごとに雪ぞ降りたる
  239. 我が袖に降りつる雪も流れ行きて妹が手本にい行き触れぬか
  240. 淡雪は今日はな降りそ白栲の袖まき干さむ人もあらなくに
  241. はなはだも降らぬ雪ゆゑこちたくも天つみ空は雲らひにつつ
  242. わが背子を今か今かと出で見れば沫雪降れり庭もほどろに
  243. あしひきの山に白きは我が宿に昨日の夕降りし雪かも
  244. 誰が園の梅の花そもひさかたの清き月夜にここだ散りくる
  245. 梅の花まづ咲く枝を手折りてばつとと名付けてよそへてむかも
  246. 誰が園の梅にかありけむここだくも咲きてあるかも見が欲しまでに
  247. 来て見べき人もあらなくに我家なる梅の初花散りぬともよし
  248. 雪寒み咲きには咲かぬ梅の花よしこのころはかくてもあるがね
  249. 妹がためほつ枝の梅を手折るとは下枝の露に濡れにけるかも
  250. 八田の野の浅茅色づく有乳山嶺の淡雪寒く降るらし
  251. さ夜更けば出で来む月を高山の嶺の白雲隠すらむかも
  252. 降る雪の空に消ぬべく恋ふれども逢ふよしなしに月ぞ経にける
  253. 沫雪は千重に降り敷け恋ひしくの日長き我れは見つつ偲はむ
  254. 咲き出照る梅の下枝に置く露の消ぬべく妹に恋ふるこのころ
  255. はなはだも夜更けてな行き道の辺の斎笹の上に霜の降る夜を
  256. 笹の葉にはだれ降り覆ひ消なばかも忘れむと言へばまして思ほゆ
  257. 霰降りいたも風吹き寒き夜や旗野に今夜我が独り寝む
  258. 吉隠の野木に降り覆ふ白雪のいちしろくしも恋ひむ我れかも
  259. 一目見し人に恋ふらく天霧らし降りくる雪の消ぬべく思ほゆ
  260. 思ひ出づる時はすべなみ豊国の木綿山雪の消ぬべく思ほゆ
  261. 夢のごと君を相見て天霧らし降りくる雪の消ぬべく思ほゆ
  262. 我が背子が言うるはしみ出でて行かば裳引き知らえむ雪な降りそね
  263. 梅の花それとも見えず降る雪のいちしろけむな間使遣らば
  264. 天霧らひ降りくる雪の消なめども君に逢はむとながらへわたる
  265. うかねらふ跡見山雪のいちしろく恋ひば妹が名人知らむかも
  266. 海人小舟泊瀬の山に降る雪の日長く恋ひし君が音ぞする
  267. 和射見の嶺行き過ぎて降る雪の厭ひもなしと申せその子に
  268. 我が宿に咲きたる梅を月夜よみ宵々見せむ君をこそ待て
  269. あしひきの山のあらしは吹かねども君なき宵は予て寒しも

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